定期イベントレポート

「関西食文化研究会では、主要な活動のひとつとして、
食のプロには関心の高いテーマを投げかけるイベントを定期的に実施。
当イベントでは食通の有名人や料理人を招き、話を伺ったり実際に会員様の目で料理をする姿を見ていただいています。

 過去のサンプル記事はこちら 

イベントタイトル:「メイラード反応とは何か?」

開催日:2011.6.26

Program 2:料理デモンストレーション[フランス料理]

山口 浩(やまぐち ひろし)氏
「神戸北野ホテル」総支配人・総料理長、
関西食文化研究会コアメンバー
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「メイラード・アイスクリーム」

今回は、メイラード反応とカラメル化が、どういうふうに違うのか。デザートでその違いを見たいなと考えてきました。特別な工夫はないですけど、違いは大きい。うちの製菓長(「イグレックプリュス」製菓長・多田征二さん)に「メイラード反応でアイスクリームを作れないか?」という話をしたら、「キャラメル以外で、お菓子のそういう作り方があるかどうか、ちょっと経験がないです」という返事。「それじゃ、やってみよう」ということになりました。彼の印象は「キャラメル・アイスクリームには、舌に刺すような刺激を感じるけれど、メイラード反応では感じません」です。実際に食べて、どうなのか感じてもらえればいいかなと思います。

そのアイスクリームですけど、いろんな料理にも応用ができると思います。メイラード反応がわからない時から、ショ糖に酸を加えることによって、ブドウ糖と果糖に分解し、熱を加えることによって、おいしくなるというのはありました。カレーにタマネギを炒めて入れたり、ガストリックを少し入れてやると、ある程度の効果が得られます。人がおいしいと感じる香りが入るんですね。

今日は、ガストリックのテクニックを使います。これは、グラニュー糖です。西洋料理では使うことが多いのですが、酸によってグラニュー糖のショ糖が果糖とブドウ糖に変わったということです。今日は220度まで持っていきます。相当焦げています。220度まで上がりにくいですが、温度を上げていきます。220度で止めたい時には、オレンジジュースで止めたり、ブイヨンで止めたりとか、ダシで止めてもらってもいいんですが、今日はアイスクリームなので生クリームで止めます。生クリームが冷たいと弾くので、あたためます。沸騰直前まで。温度差がなってくるので飛び散ることは少ない。外側と温度が違うので、むだに動かしているわけではないんです。鍋の外は、もう少し高くなっています。熱によって化学反応が促進されているので、色づきがある一定の時から速くなります。速いでしょう、反応が。205、206度の状態です。煙で見えにくいですね。茶色のが、残っている。赤褐変色が残っています。場所によって210度とか少し高めという状態です。真っ黒の状態です。

もう、このへんで止めたいというレベルを越えていますよね。何時間も煮詰めているようなものが、一瞬にして鍋の中でできあがったという感じです。メイラード反応が、なぜタマネギや肉の匂いとかに現れるのか。チョコレートとかカラメルの甘味とかに現れるのか。村田さんの作られたのは、もっと前の段階のフレッシュ感だと思いますが、これは体に悪いよという感じの、濃さ、食べていいのかなという感覚。それらも料理を複雑にする要素なのですね。食べて、多分、おいしいなと思われるのでも、子どもが食べたら、おいしいと思わないかもしれません。余分な味があるとか、苦いとか。味というのは、そういうものなのかも、わかりません。

アイスクリームを作る時、料理と同じようにブランシールしています。生クリームを温めて止めて、牛乳とバニラを一緒に入れて炊いて戻し、キャラメルにしたものを熱で溶かしています。まだ召し上がっていただいてないんですけど、キャラメル・アイスクリームとメイラード・アイスクリームを何か想像されることってありますか。味を想像した時とか、こういう違いが必ずあるよとか。

メイラード・アイスクリームから先に、カラメル・アイスクリームをその後にお出しします。味はインプットしながら食べていかないと、記憶と味が結びつかないのでね。メイラード・アイスクリームの方が、なめらかなんですね。うま味成分があって。通常のアイスクリームにないコクだし、苦味の部分を感じていただけると思うんですが。そういう意味では、タンパク質と糖質とメイラード反応があって、究極のアイスクリームですね。ここに苦味が入っているので年配の人たちにも濃く感じるという。

川崎 メイラード・アイスクリームを食べて、カラメル・アイスクリームを食べると、ちょっと物足りないくらいですね。多分、香りと味の関係、甘い香りのするものと甘いものを食べたら甘味が増強される。そういうのもあるかなと。カラメル化は甘い香りで、メイラード反応の方はそれだけではなく、もっといろんな風味がある。カラメル化は、メイラード反応を起こしたものより時間差を感じると思います。最初に甘い香りがした後に、いろんな香りがどんどん出てくる。その後味の香りを楽しんでもらえたらな、と思います。

山口 ブランシールして黄身を泡立てるようにして、空気がクッションになって火が入りにくい状態になっています。すごい色でしょう。もう少し、といわれて、僕も我慢しました。なかなかここまで我慢できない。でも精一杯の我慢を見ていただきました。どうですか。香りは温度が低いと出にくいので、時間がたってからくると思います。多田製菓長は、メイラード・アイスクリームとキャラメル・アイスクリームを食べ比べた時、お菓子のプロとしてはどう感じましたか?

多田製菓長 お菓子としては若干、物足りないなという部分はありました。僕らはムースをキャラメルで作る時は濃くさせてます。生クリームとか足すので、薄まるのを計算してキャラメルを入れてわざと苦味を持たせるのです。メイラード反応は苦味は少ないので、ムースにはむかないかな。

川崎 チョコレートとかコーヒーの香りもしますね。コーヒーは発酵させて豆を煎りますね。200~250度で、温度によって香りが違う。加熱する温度を変えればまた香りが違ってくる。個性が出る。

山口 パンケーキも、完全なメイラード反応で、砂糖をとったら真っ白いパンケーキができるとネットでやっていました。パンケーキはグラニュー糖よりも上白糖の方がきれいに焼ける。理屈がわかってくると、料理の質も上がってくるんですね。今回、皆さんにどういう形で体感してもらおうかなと思って調べていく過程で、そういうことも思いました。

「メイラード・アイスクリーム
(左がメイラード反応を起こしたアイスクリーム)」

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