ナチュラルチーズ
MOrmaggio(モロマッジョ)

生産者:コパン・ドゥ・フロマージュ 宮本 喜臣さん
和歌山県紀の川市

「MOrmaggio(モロマッジョ)」は、醤油の素になる“もろみ”と組み合わせたチーズで、MOROMI+formaggio(フォルマッジョ:イタリア語のチーズ)を縮めた呼称である。この独創的なチーズを企画したのは、和歌山県紀の川市にあるナチュラルチーズ専門店「コパン・ドゥ・フロマージュ」のオーナー、宮本喜臣さんだ。

「もろみは、地元の湯浅醤油でつくられたものです。それをイタリアの老舗チーズ工房へ持ち込み、共同開発したチーズがモロマッジョなのです。構想から数年かかりましたが、試作を重ねてようやく2017年に完成させることができました。もろみ独特の香りとコクがミルクの風味とうまく合い、奥深いうま味のチーズになったとイタリアでも高い評価をいただき、これまでやってきたことに自信がもてました」

そう話す宮本さんの経緯は、ざっと以下のとおり。食関係の会社に勤めていた頃に、ワインやチーズに興味をもち、なかでもチーズについて詳しく知ろうと独学を始めたのが30歳頃。やがて、チーズプロフェッショナルの資格を取得し、イタリアへ渡るなど本腰を入れてチーズについて学んでゆく。2013年にはフランスチーズ鑑評騎士を叙任。ついには独立して、41歳になる2014年、ナチュラルチーズ専門店「コパン・ドゥ・フロマージュ」を構えるまでになる。

出身地の紀の川市に、店舗兼用の自宅を新築しているのだ。「思い切って、温度や湿度の調整ができるカーヴ(保管庫)も設けました」と聞けば、宮本さんの並々ならぬ覚悟がうかがえられる。

「とくにヨーロッパのナチュラルチーズを広めたいのですが、チーズを通して地元の和歌山を発信していきたいとも思っているのです。和歌山には、梅、果物類、備長炭など特産物が多様にありますから、それらとチーズを組み合わせたオリジナル商品も開発しています」

そうしたことが可能なのは、宮本さんがチーズ洗練士であるからだ。チーズ洗練士とは、既存のチーズに別の食材を使って風味づけしたり新たな価値をつくりだすひとを指す。宮本さんの店には、既に、肉桂、ぶどう山椒、金柑、備長炭などを使ったオリジナルチーズが数種並んでいる。

「チーズ洗練士は私もイタリアでそういう職種があることを知りました。北イタリアのチーズ洗練士として知られた師匠に教えを請い、チーズ洗練士と認めて頂きました。」こうして、宮本さんは日本でチーズ洗練士として様々なオリジナルチーズを手掛け、その過程でモロマッジョという成果がもたらされたのだ。

農水省の調査では、国内のチーズ消費量は年々伸び続けている。それに、EPA(経済連携協定)の発効にともない、EU(欧州連合)諸国がこれまで以上にナチュラルチーズの売り込みをかけるはず。とはいえ、一人当たりの消費量をみれば、日本はEU諸国に比べればまだまだ少ないのが現状だ。宮本さんは「それだけ、伸びしろがあるということ。本場のナチュラルチーズの良さを知って、その魅力の虜になるひとが多くなっていると実感できます」と話す。なんだか、期待もふくらみそうで、和歌山からの発信に、おおいに注目されたし。

[取材日:2018年11月20日]

住宅街に建つ店舗(1階の庇が目印)。
常時25〜30種のナチュラルチーズが並ぶ。
右に見える窓の奥がカーブになっている。
モロマッジョに使うもろみと同じ醤油。
湯浅醤油については2012年食材レポート第36回の記事を参照ください。
師匠から贈られたチーズ洗練士の証書。

ナチュラルチーズ MOrmaggio(モロマッジョ)

コパン・ドゥ・フロマージュ
和歌山県紀の川市桃山調月769-136
tel&fax:0736-60-7175
mail:info@copain-f.com
https://www.copain-f.com/about
*お問い合わせやお取引は各自でお願いします。
チーズのことやチーズプロフェッショナルについては以下のサイトを参照。
・C.P.A.チーズプロフェッショナル協会
https://www.cheese-professional.com
フランスチーズ鑑評騎士については以下のサイトを参照。
・フランスチーズ鑑評騎士の会
http://taste-fromage-japon.com

[ 掲載日:2019年1月21日 ]