農法から販売まで。独自スタイルで拓く、農業の新しい可能性。
「ヨーロピアンリーフミックス」

優れた食材が行き先を失い、最悪の場合には破棄されていく。
そんな苦境に立ちながらも、少しでも美味しい食材を届けようと頑張る農家が注目を集めている。
GreenGrooveの代表・中島さんも、そんな一人。
看板商品は、約10種類の葉野菜を組み合わせた「ヨーロピアンリーフミックス」。名前からわかるように、海外から輸入した種を使用する。なぜ、わざわざ?
「味や歯ごたえ、美しさを追求した結果です。私たちのような個人選果農家は、自らブランドをつくらないといけない。徹底してこだわりました」と、中島さん。
珍しいのは品種だけではない。栽培方法は独学。栽培システムは手作り。何もかもオリジナルを貫く。
「最初は水耕栽培のシステム一式を購入しました。ところがトラブルが続き、どうしても前に進まなくなった。それなら勉強して、納得できるものをイチから自作しようと決めたのです。ひたすら試作と実験を繰り返し、現在の設備と農法にたどり着きました」。自己流でありながら、味も姿も良く日持ちもするプロも認めるリーフミックスを完成させたのだから驚くしかない。オーナーシェフから有名ホテルまで、「ミックスされているが風味も歯ごたえも、それぞれ野菜の個性がはっきりと生きている。肉厚さも水耕のレベル以上。葉に張りがあり、ピンと立ち上がるため少量でも盛り付けが決まる」と声を揃える。多くの料理人に選ばれるのも頷ける。
しかし後に、この栽培法がとんでもなく異例だと気づく。例えば肥料。「なぜ、これで育つの?」と、驚かれるほど濃度が薄かったのだ。だが幾度も試した上で、一番良い確信がある。揺らぐことはなかった。栽培システムも良い意味でアナログ。普通は水の管理や肥料の調整を1か所で行うが、GreenGrooveは栽培レーンごとにポンプを設置。だからこそ品種ごとに最適な溶液成分を調整でき、多品目栽培を可能にした。
ともすれば“規格外”だが、成功すれば真似のできない差別化になる好例といえる。
顧客のほとんどはレストランやホテル。淀屋橋odonaの入口前で開催される「大阪マルシェほんまもん(淀屋橋オドナマルシェ)」では、一般のお客様へ対面販売も行う。近隣の会社員や住民が足を運ぶほか、キタや本町界隈に店を構えるシェフ達も常連だ。
だが、今年の春は緊急事態宣言が直撃。大阪の飲食店が顧客の大半を占めるため、自粛閉店により発注はゼロに落ち込んだ。1日に500パックもの商品が行き場を失い、連日廃棄となった。さらに頭を悩ませるのが、すでに育ちつつある苗をどうするか。収穫期を迎えるまで約2か月半。その時、世の中がどうなっているのかなど、わかるはずがない。無駄になるかもしれないが、植えるしかない。つらい日々が続く。
とにかく販路拡大のため走り回った。
マルシェも3月から6月まで自粛閉店。テレワークになり淀屋橋に出てくる機会が減った人もいる一方で、夏に再開してからは新規客が増えてきた面も。「巣ごもりでおいしい食材を食べようと思った時、マルシェが選択肢に入ったのかな」と、中島さんは分析する。飲食店からの受注は落ちたが、家庭での需要が伸びてきた。
希望が見えたのもつかの間、12月4日から大阪で警戒の赤信号が灯る。それでも前回と違うのは、家庭需要の増加と新たに百貨店での取り扱いがスタートしたことだ。
特筆すべきは阪神百貨店(西宮店)に、今年9月からオープンした「産地直売コーナー」。
「大阪府が実施する生産者支援策の一環で、阪神百貨店さんが販路拡大のために協力を申し出てくれました」と、中島さんは笑顔を見せる。
当初は自社の野菜を販売する計画だったが、大阪の個性ある野菜を広く扱いたいという提案が持ち上がった。地域の生産者に顔が効く中島さんの人脈を活かし、地元野菜を集めて卸してほしいという。
「大阪には、生産量が少なく市場に出回らないだけで、農家が独自に工夫した上質な野菜がたくさんあることを知ってほしい」。
大阪都市型農業の魅力をアピールすると同時に、販路拡大が難しい個人農家をつなぎ、ともに発展できるネットワークづくりをめざす。まだまだ解決すべき課題は山積するが、卸業も新しい柱として確立していきたいと、中島さんは意気込む。
[取材日:2020年12月21日]

※2か月に1度、不定期の出店調整があります。出店日については、SNS(Facebook、Instagram)のご確認をお願いいたします。





農法から販売まで。独自スタイルで拓く、農業の新しい可能性。
「ヨーロピアンリーフミックス」
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- 事業内容:洋野菜を中心とした栽培および、加工品の製造・販売。
[ 掲載日:2021年1月20日 ]