巣の中にあるがままの蜂蜜を、そのままビンへ、食卓へ。「非加熱・無添加 天然蜂蜜」

色とりどりの花が色彩を競うこの季節。春の訪れは、蜂蜜のシーズンでもある。これまで蜂蜜に旬を意識したことはなかったが、確かに今なら搾りたてが楽しめるに違いない。ならば、非加熱・無添加で自然そのままの風味を味わいたい。そんなこだわりに応えてくれる養蜂場が和泉市にあると知り、さっそく足を向けた。大都市に隣接していることを忘れるほど豊かな自然の中を奥深くへと進むと「真山養蜂場」が見えてくる。
「養蜂をはじめたのは12年前くらいから。当時、中国産のハチミツを国産と偽装する業者が問題になっていました。私が買っていた高価な商品も、実は中国産だったのです(笑)。それなら、と自分でつくりはじめました」と、真山謹一さん。もともとは地下に設置する電気ケーブルの施工に携わっていたが、時代とともに受注が減少。そんな背景も相まって、25年間続けた仕事に見切りをつけ、養蜂家に進路変更した。自信も裏付けもなく、“好き”だけが動機。まったくの未経験から、この世界へ飛び込んだのだ。
多くの場合、ベテラン養蜂家に弟子入りして学ぶのが一般的。真山さんのように独学からの挑戦は珍しいという。
「兵庫県の博物館で開催されていた『愛蜂講座』や、本で主に勉強しました。ネットも利用しましたが間違った情報に振り回され、失敗も重ねましたよ」と振り返る。
それでも1年の準備期間を経て養蜂場をオープン。当初は、自分と家族用につくる予定だったが、一度ハマると突き詰めなければ気が済まない性分。夢中になって蜂を増やしていくうちに、食べきれない量ができてしまった。
そこで思いついたのが、マルシェイベントへの参加だ。試しに出品してみると、評判に火が付いた。最初は収益などまったく意識していなかったらしい。いや、お客様が増えた現在も考えていないそうだ。「そもそも儲けを重視するなら、非加熱のように効率の悪い製品はできない」と笑い飛ばす。
時間もかかる。手間もかかる。それでも非加熱にこだわる真山さん。理由はシンプルに、蜜蜂が採ったそのままが一番美味しいからだ。加熱している商品は、作業時間を短縮するために熟成前の水っぽい状態で採蜜し、煮詰めて水分を飛ばす。ビンへ入れる際も、作業性を優先して加熱して柔らかくする。しかし、ミネラルやビタミン、酵素は壊れてしまう。味が落ちることは言うまでもない。
「西洋蜜蜂は家畜ですから、育て方も重要です。元気に働いてもらうには、ストレスをかけないこと。防衛本能が強い生き物なので、構い過ぎるのは厳禁です。採蜜も午前中に短時間で済ませ、蜜も餌用に少し残しています。すべて絞って、代わりに砂糖水を入れる養蜂家もいますが、栄養成分が違いますから。蜂にとっては良くありません。
一番気を使うのは夏の温度管理でしょうか。直射日光が当たると、巣箱の中は50度まで上ります。日よけ対策は絶対ですね」。
一方で、近年は蜂が減りつつあるんです、と表情を曇らせた。主な原因は、農薬と病気の問題だ。以前の農薬は匂いが強く蜂も近づかなかったが、最近は無臭のものあり被害を受けることも多い。加えて、蜂に取り付き、ウイルスを媒介するダニも目立つ。悩みは深刻だが、話しながら愛おしそうに蜂を見つめる真山さん。「いつでも健気に一生懸命、働くんですよ。生態を観察するだけでも面白いです」と顔をほころばせる。
今年もそろそろ春の足音が、蜂蜜の旬を連れてくる。ピークは5~7月上旬まで。採れたてを味わうなら夏までだ。「だけど、半年ほど寝かした方が美味しい種類もあります。まろやかになるのです」と、アドバイスがもらえた。
蜂蜜は、トーストにヨーグルト、グラノーラと食べ方も多彩。果実を漬け込めばシロップにもなる。しかし一番のオススメは、そのまますくって食べて欲しいと笑う。いかに工夫を凝らした賞味法も、自然そのままの素材が放つ滋味には遠く及ばない。
[取材日:2020年3月2日]









巣の中にあるがままの蜂蜜を、そのままビンへ、食卓へ。「非加熱・無添加 天然蜂蜜」
- 取材協力
- 真山養蜂場
- 大阪府大阪市住之江区北加賀屋2-7-1
- tel:06-6685-2057 fax:06-6685-2059
- mail:mymknic@ja3.so-net.ne.jp
- https://www.facebook.com/mayama.beefarm/
- 事業内容:天然ハチミツの製造・販売。
[ 掲載日:2020年3月23日 ]