添加物一切不使用。搾りたてを即加工する、絶品やぎ乳製品

生産者:有限会社 るり渓やぎ農園 取締役 片岡 明宜さん
京都府南丹市

上質なチーズやミルクを生産している農場がある。そう聞くと、まず頭に浮かぶのは牛であり牛乳ではないだろうか?いや、食に敏感な関西人なら、さらに想像を広げている方も多いことだろう。そう、おいしい乳製品といえば、忘れてはいけないのが「やぎ」である。
日本では珍しいやぎの乳製品を目当てに、るり渓やぎ農園に向かった。

緑に囲まれた広大な敷地に、ノビノビと過ごす約40頭のヤギたち。畑には農薬も化学肥料も使わず栽培する野菜や米(米は除草剤を1回だけ使用)。思わず心が癒される。それにしても、なぜやぎを?率直な質問を取締役の片岡さんにぶつけてみた。
「創始者のひとりが福祉関連の専門家で、2005年の開園から福祉と農業の連携がテーマにありました。デイサービスなど施設の充実も目標のひとつにあり、高齢者や障がいのある方、子どもが遊びに来ることも想定できます。そこで、人懐っこい性格のやぎにしました」
少し意外な答えが返ってきた。さらに「人と同じことをやっても面白くないですから」と続く。もう一つ加えれば、飼育経験もなかったというから驚くしかない。
サラリと語る片岡さんだが、乳製品づくりに人並みならぬ情熱を注いできたことは容易に想像がつく。
そうでなければ、日本屈指のレストランやパティシエから、長年愛され続ける訳がないのだから。

「オープン当時は知名度もなく、日本ではやぎチーズそのものがマイナーな存在。お客さまは限られていました」と、振り返る。
数が少なかったとはいえ、この錚々たる顔ぶれを見れば、やぎ農園の高いレベルがわかる。レストランで初めて声がかかったのは、早々に日本で3つ星を獲得した東京屈指の一流店。やぎヨーグルトが10年以上もデザートに使われている。関西で3つ星に輝く人気イタリアンも、野菜やチーズを愛用。京都の有名パティスリーも、地元食材のケーキをつくる際にチーズを手に取った。ほかにホテルなども、お客さまリストに名を連ねる。
現在は徐々に口コミが広がり、幅広く問い合わせがあるというが納得だろう。ネット販売では、健康に気を配っている個人のお客さまに好評とか。お腹にやさしく、低脂肪、そしてやぎ農園のミルクは、臭みがなく甘くておいしいというのも人気の秘訣だ。もちろん乳化剤・安定剤などの添加物は一切使わない。

「それでも、まだまだ…。挑戦したいことは、たくさんあります」
その言葉通り、最近は熟成タイプ(セミハードタイプやカマンベールのような白カビタイプなど)の充実にも力を入れる。
もっとおいしく、安全な乳製品のために何ができるか。飼料の自給は、スタッフ全員の悲願だ。
「薬品で作物を消毒する輸入品は不安ですからね。まずは鶏用の配合飼料の材料として数年前から飼料米をつくりはじめ、来年は栽培面積を12,000㎡まで広げます。味も安心感も向上するでしょうね」と、自信を見せる。

“人が暮らしていくために最低限必要な物は、安全で安心な食べ物。そして弱った時に支えてくれる場所や仲間”
るり渓やぎ農園が開園から大切にしてきた想い。それはこだわりの食材へと結実し、これからも皆様の拠り所として愛されていくに違いない。

[取材日:2019年5月31日]

やぎの飼育から乳製品づくり、イベント開催、販路拡大まで…。忙しい日々を連携してこなすチーズチームのスタッフ。
やぎチーズは固めのタイプなら乳量の約10%、フレッシュタイプで約13%しかつくれない。大量生産できない貴重な食材だ。
冷蔵庫の中で完成を待つフレッシュチーズ。丹精込めて本場フランスの手法で手作りするため手間暇がかかる。比較的早くできるものでも4日間は必要。
2016年に現在の場所に移転。やぎ舎とチーズ工房が隣接しているので、絞りたてをすぐに加工できる。鮮度はもちろん、ミルクの質が変わった時「やぎに何かあったのでは?」と、気づける。こうした環境は全国でも数か所しかない。
今食べるべき国産チーズを選ぶコンテスト「ジャパンチーズアワード」で、2016年にフロマージュ・フレが銅賞を受賞。18年にはフロマージュ・フレとゴーダチーズが銅賞をW受賞。今後はより上位を狙っていく。
平飼された鶏から採れる卵も販売。配合飼料に加え、農園で収穫される穀物や野菜、やぎの乳清などを与えている。安全性もおいしさもひとつ上。

添加物一切不使用。搾りたてを即加工する、絶品やぎ乳製品

るり渓やぎ農園
京都府南丹市園部町大河内小米阪1-3
tel & fax:0771-65-9010
mail:nouen@ruri-yagi.com
https://www.ruri-yagi.com/
事業内容:ヤギ乳製品の製作・鶏卵の採取・米、季節野菜(きゅうり、ミニトマト、ナス、カボチャ、ズッキーニ、加茂ナスなど)の栽培

[ 掲載日:2019年7月22日 ]