枯露柿(ころがき)

生産者:山口 茂雄さん
山梨県笛吹市一宮

柿の実は渋くて当然。渋味のもとになる柿渋は防腐作用があるため、古来から建材や衣料、薬や食品など様々な用途に使われている。けれど、果実を目にすれば、どうにかして食べたいと思うのは人情だろう。それで、渋抜きする方法がいろいろ試されたと考えられる。確かな手法のひとつとして今に伝わるのが、皮を剥き乾燥させてつくる「干し柿」である。ちなみに、渋くない甘柿は、突然変異で生まれたものらしく、現在も渋柿の品種が圧倒的に多い。

柿の渋味は、茶やワインにも含まれるタンニンと呼ばれる植物由来のものが口の中で唾液に溶けて体感される、渋いとしか表現しようのない味覚とは異なる感覚だ。柿の実を乾燥させると、タンニンが不溶性に変性して渋さは感じられなくなる。干し柿は理に適った渋抜きの方法なのである。しかも、乾くと水分は少なくなり、その分、甘味が増す。実際に、干し柿のほうが甘柿よりも糖度は高いとわかる。

近年、二酸化炭素を使うなど渋抜きの効率化が進み、甘くした渋柿(いわゆる合わせ柿)が以前にも増して出回るようになった。それも、品種名のまま売られたりして、もとは渋柿か甘柿かの区別などないがしろにされつつある。そうしたなか、「干し柿を見直すべし」と流通関係者は話す。干し柿は渋柿をつくり変えたものというのは知られている。生で食べる柿とは風味も食感も違う独特のおいしさをもたらすのは、手間仕事の結果だということも。だからこそ、価値があると言いたいようだ。

干し柿には、枯露柿(水分が25%程度)、あんぽ柿(枯露柿より水分は多め)などの名称で呼ばれているのと、市田柿のように品種名で呼ばれているものがある。また、食用ではなく正月の飾りに使われる串柿もある。流通関係者から「柿の生産量トップ3は和歌山県、奈良県、福岡県ですが、干し柿の生産量トップ3は、福島県、長野県、山梨県なのです。この3県で全国の7割以上を占めています。その理由は地域の歴史や気候風土とも関係が深いのです」と教えられる。

「干し柿を保存食にもよいと広めたのが戦国武将の武田信玄と伝えられています。上記の3県はいずれも武田一族と縁がありますよね。それに関東以北の内陸盆地にあって、10月から12月の生産時期に気温が低くても雨や雪が少ないのが干し柿つくりに適している。そういう背景もあって、今も需要は関東が中心です。しかし、串柿つくりは和歌山県の独占状態だし、関西でも干し柿の愛好者は多いのです」

そして、枯露柿の生産者を訪ねてきた話をしてくれた。「山梨県笛吹市に行ってきました。枯露柿つくりには定評のある山口茂雄さんに、長い歴史に培われてきた伝統的な自然乾燥、いわゆる天日干しの様子を見せてもらいました」

「品種は甲州百目。収穫した柿を一つひとつ丁寧に皮を剥き、熱風処理し、吊しながら並べていくのですが、すべて手作業。山口さんは11月中旬から約1ヶ月かけて乾燥させるそうです。屋根がないから雨が降る日は吊り場の上に雨よけのシートをかけたり、柿の実の全体に日が当たるよう一つずつ向きを変えたりと、休む間もありません」こうして、水分を限界までとばして糖度を高め、中の実がしっとりとした枯露柿ができる。

「干し柿は日本の伝統食でもあると思うのです。でも、他の農産物と同じく生産者さんも生産量も年々減少しているのが現状。代わって、海外に出荷する動きも出ています。日本の果物の質がよいのは知られつつあり、期待できますが、まだこれから。東南アジアの人は酸味より甘味の強いのを好むので、干し柿はきっと受けるはずなんですけど」と、最後は、いつもと同様、国内にばかり目を向けている状況でないことを知らされるのだった。

[取材日:2017年12月23日]

軒先に吊すというようなレベルではなく、建築現場の足場を思わせる規模で干し場が設けられている。
干し柿つくりにも機械乾燥が進むなか、こうして昔ながらの自然乾燥でつくられるからこそ貴重なのだ。
枯露柿の表面に見える白い粉状のものは糖分。粉が多いほど糖度は高いとか。中の艶やかで旨そうな出来具合を見れば、枯露柿が贈答用に重宝されているのもよくわかる。

枯露柿(ころがき)

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[ 掲載日:2018年1月25日 ]