大和野菜 片平あかね

生産者:片平あかねクラブ 奥中 孝俊さん・福山 若仁さん・東 直克さん
奈良県山辺郡山添村片平

奈良に門外不出の種で育てられている野菜がある。奈良県の北東部に位置する山間の村、山辺郡山添村の片平地区でしかできないから、「片平(かたひら)あかね」と名付けられた赤い色の根菜だ。その片平を訪ね、生産者を代表して、片平あかねクラブ代表の福山若仁さん、同メンバーの奥中孝俊さんと東 直克さんに話をうかがった(以下「」はメンバーの言葉)。

10月はまだ間引きの段階で、本格的な収穫は11月に入ってからということだったが、早生のなっている畑を案内してもらった。土の上に見える根は、ニンジンよりも鮮やかな紅に近い赤色だ。葉はダイコンの葉に似ている。カブの一種らしいが、根は細長い。「12月になり霜が降りと、根はもっと太くなり、茎まで赤くなります」とのこと。

「私らは、葉とともに塩もみして甘酢漬けにします。根が太くなると薄切りにして甘酢漬けしたり糠に漬け込んだりしますが、基本は冬の保存食なのですね」そうした地域特有の野菜として戦前から作られ続けているという。

見た目は小ぶりのダイコンとも言えるが、齧ると辛味はなくてカブ特有の風味を強く感じる。もちろん、生でも食べられるし、塩漬けや酢漬けにしても使い勝手はよさそうだ。それに加えて、この鮮やかな赤。地域の保存用にしておくにはあまりに個性的である。これまで知るひとぞ知る存在だったのもわかるような気がする。

「林業がむいている山間の村ですから、農地は限られてきます。雨が降れば水蒸気が霧になってたちこめる土地なので、米作以外に大和茶の苗づくりが盛んでした。赤い色の根菜は、合間に各家で自家用に育てていた野菜のひとつだったのです」でも、限られた畑での栽培が菜っ葉類に多くみられる交雑を防ぎ、長く自家採種で系統が守られてきたことから、今では奈良県の大和野菜のひとつに認定されている。

こうなると、育てる側にも力が入る。そもそも「片平あかね」の名前は、片平地区の農家が広く知ってもらおうと新たにネーミングしたもので、商標登録も済ませている。有志で「片平あかねクラブ」も組織された。「主たる活動は種を守ることです。毎年、皆がとれたのを持ち寄って品評会を開き、次年度に育てる優良種を選ぶようにしています」もちろん、片平で育てられたものしか「片平あかね」と名乗れない。

その品評会は、「片平あかねまつり」というイベントに拡大。今年も11月23日(祝)に予定されている。また、近年は、片平あかねの加工食品を手がける仲間も現れるなど新たなつながりもできつつある。「各家で受け継いできた栽培方法で育てるだけでなく、メンバー同士で情報交換したり、商品価値を高めるために切磋琢磨の日々です。収穫量に限度はありますが、流通の整備など課題はまだ多いのです」。より多くの人に知ってもらえるようにと祈るばかりである。

[取材日:2017年10月19日]

山間の地に畑が点在する山添村片平地区。取材日は雨後も水蒸気がたちこめるのが見えた。
もとは茶畑だった畑で育つ片平あかね。現在、片平あかねクラブには20名が参加している。
土の上の赤い根が鮮やか。旬は11月から12月で、年間3万tが収穫できる。
輪切りにしてみると中は白い。塩もみして酢に漬けると赤く色づいてゆく。

大和野菜 片平あかね

「片平あかね」に関する問い合わせは
片平あかねクラブ代表の福山若仁さん
E-mail:ma23sm75ml@kcn.jp
*ご注文などは直接ご連絡してください。
大和野菜の公式紹介サイト
http://www.pref.nara.jp/2767.htm
「片平あかねまつり」山添村観光協会のサイト
http://www.yamazoekanko.jp/3243

[ 掲載日:2017年10月25日 ]