ゴマ(胡麻)

和食が世界から注目されるとともに、発酵調味料をはじめ和食になくてはならない食品までもスポットライトを当てられるようになっている。しかし、世界には伝わっていないだけで、自慢したくなるモノはまだまだ数多くあるよねと話していたら、流通関係者がこう言った「そろそろ、ゴマの出番でしょう」。
「ゴマは、油の採れるくらい脂肪は多いけれど、リノール酸など必須脂肪酸を含む植物油なので摂取を心がけたいほど。それに、高タンパクで、ビタミンやミネラルも各種豊富にある。というように栄養価が高く健康維持にも効果的なのがわかっているから、日本では重宝されてきたのであって、元祖スーパーフードと言いたい」
そういう話を聞きながら案内されたのは、大阪市東住吉区にある㈱大村屋。昭和12年(1937年)創業のゴマ専門の製造・販売会社で、プロには定評あるゴマ屋さんという。代表の田中洋治さんに迎えられ、まず工場を見学させてもらった。
何しろ、健康食品に使われるゴマ特有の栄養素の名は言えるけれど、食用のゴマがどのように加工されているかはわかっていない。例えば、日本では古くから食されているのに、今や原料の99%が輸入に頼らざるを得ない現状さえ初耳なのだ。
ゴマの原料は、ゴマの木から採れる種子。その種皮の色によって、白ゴマ、黒ゴマ、金ゴマなどに分けられる。種皮を除いて乾燥させたのが「むきゴマ」、焙煎したのが「いりゴマ」、いりゴマをすったのが「すりゴマ」、いりゴマをすりつぶしたのが「ねりゴマ」と呼ばれる。などの基本を教わりつつ、工程にそって説明を受けた。
「今は主に中南米から仕入れていますが、現地の生産者には採取した種の干し方などを指導したり、品質をよくするために努力しています。それに、白ゴマは真空パックにして輸入することに成功。無酸素状態なので、ゴマが酸化しにくいし、虫がつかないから殺虫剤で燻蒸する必要もありません」と、品質のよさと安心面を強調。
とは言っても、ゴマは一粒ミリ単位の小さくて細かいもの。大豆やコーヒーの生豆に比べて扱いも慎重になる。「当社では、皮をむいて以降、石や金属の不純物を除くために独自の機械を導入して、何工程も経て原料を選別し、粒を揃え、色で分けています」
「選別には機械に頼るだけでなく、ベテラン社員の目と手も加わります。女性が多いのですが、日頃からゴマに接しているからか、皆、肌の色艶もよいし健康でしょう」と田中さん。
そして焙煎。いりゴマはこうして出来るが、各種のゴマは、工程の違いによることがわかる。「この後は、いりゴマをすりつぶし、ねりゴマを作ります。ねりゴマは、和食では“あたりごま”とも呼ばれていますが、当社では、早くから飲食店などで使われる業務用のねりゴマ生産に取り組んできました」
大村屋の代表商品「絹こし胡麻」は、そのねりゴマのひとつであるが、すりつぶした後のクリームみたいな滑らかさと香味に特徴がある。「ふるいにかけるメッシュを細かくしたり、液体窒素を使い超微粒子にすることも可能です。今では、ご要望に応えてどのようなゴマも作れます」とのこと。
地道に、かつ堅実にゴマ一筋。あくまでも食用のゴマゆえに、食品添加物は使わず素材を生かす道を選ぶ。そのなかで、原料の調達や機械化など科学的に進められることは進めてゆく。そうして商品は、業務用も家庭用も多様に広がっているのだった。ゴマひとつ、生産サイドの進化を実感するにつれ、日本の食が世界に認められるのも当然だと思うのだった。次は、ゴマでしょう。
[取材日:2016年9月28日]




ゴマ(胡麻)
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[ 掲載日:2016年10月27日 ]