ホワイトコーン

多様な野菜が今や年中出回るなか、夏の間にしか採れず、夏野菜を代表するひとつにトウモロコシがある。近年は、実が大粒で、皮が薄く、生でも食べられ、しかも糖度が高い品種が人気だ。そうした新しいトウモロコシを総称するスイートコーンの一大産地、北海道を視察して帰阪したばかりの流通関係者に話をうかがった。
夏野菜といえば、トウモロコシの他にトマト、キュウリ、ウリなどを思い浮かべるが、その主要な産地の多くは山間部や高地の、夏でもしのぎやすいところにあるという。関西の身近な畑を見てもらえばわかると思うけれど、夏の炎天下ではさすがに野菜も干からびてしまい、育てるのが難しい。そういう意味で、これからの時期、市場に出回る夏野菜には、北の大地、北海道産が多くなるそうだ。
今回の視察地は、十勝エリア。北海道の中央の南にあって、帯広市を中心に明治時代から酪農や畑作が行われ、現在は北海道でも有数の農業地域として知られる。例えば、小麦、砂糖の原料となる甜菜(てんさい、シュガービート)など国を支える作物も作られている。バターなどの乳製品、菓子など食品加工も盛んで、いろんな製品から十勝の名が連想できるほど、ブランド力がある地。と、流通関係者は話す。
「とにかく広い。農家の耕作地が平均で50haあるのです。甲子園球場が全体で約4haといわれてますから、スケールがでかすぎです。野菜作りも想像を超えてます。ほとんど機械化されていて、普段見慣れた農作業とはまったく違いました」
そのなかでも、流通関係者が注目したのは、白木農園という。4代目の白木智哉さんが育てているのは、実が白いホワイトコーンと呼ばれるスイートコーンだ。
この白いトウモロコシ、ピュアホワイトという品種が生まれて広く知られるようになったけれど、黄色い実のトウモロコシの花粉を混ぜずに栽培するのが難しい。白木さんも、各種の品種を試しながら育てている。白い実は、スイートコーンでも皮がやや堅めなのが難点だったが、それも改善。薄くて糖度も高いホワイトコーンにしているという。
「畑の広さを生かし、別の品種の花粉が混ざらないよう隔離できている。それに、温泉地に近くて地下水の質がよいこと。ビール酵母など食品由来の肥料を利用したり、減農薬栽培による差別化もはかっていて安心なこと。何より、白木さんが野菜作りに情熱をもっておられることが伝わってきました」
ただ、心配なのは、天候という。この数年、梅雨のない北海道が長雨に悩まされている。今年も6月から雨の日が続き、水が溜まったり、日照時間が不足して、野菜には生育不良が目立っているらしい。
白木さんのホワイトコーンも収穫が予定より遅れているそうだ。今年はこれから8月にかけてが最盛期になる。「でも、白木さんなら大丈夫。北海道で4代続く農家ですから鍛えられ方が違う。研究熱心なのもわかりましたし、どういうホワイトコーンができてくるのか楽しみです」と、流通関係者も期待をよせる。
[取材日:2016年7月11日]



ホワイトコーン
- 取材協力
- 東果大阪株式会社
http://www.toka-osaka.co.jp/
[ 掲載日:2016年7月21日 ]