無農薬新玉ネギ

平成21年(2009年)に農地法が改正され、会社をはじめ法人でも農地を借りるなどして農業へ参入できるようになった。以来、参入数は平成27年で2039になる(農林水産省の統計)。それほど多くの新たな挑戦が各地で行われているのだ。
ロート製薬株式会社も、一般農業法人ハンサムガーデン株式会社を設立し、農業に取り組んでいる。ただし、化学肥料や農薬を使わず、土地や環境への負荷を可能な限り低減させた“有機農業”である。今回は、その実践の場、宇陀農場を訪ねた。現地では、農業に専念するハンサムガーデンの早坂亮さんに話をうかがった。
「ロート製薬は“健康と美に関するあらゆるソリューションを提供する会社”を目指しています。健康や美について突き詰めていけば、根本にある食の問題へたどり着きます。食に関連する事業やその基となる農業にも関心をもち、具体的に取り組むようになったのは、自然な成り行きなのです」
したがって、消費者が口にする食材には敏感にならざるをえない。「農業は初めてだからこそ、理想を求めました。有機農業は手がかかるとわかっていても、安心してもらえるものを育てられるなら」と、有機農業を選んだ理由を話してくれた。
現在、農地は合わせて約1ha。露地やハウスの畑では約30種の野菜が作られている。小松菜やほうれん草などの葉物は1年を通して何かしら収穫できるよう計画的に栽培。ハウスでは、香りのよいルッコラやパクチー、ベビーリーフが育っている。なかでも、リーフレタスなどの非結球のレタス各種に力が注がれていた。肥料はすべて、牛糞や鶏糞などの有機物を発酵させた堆肥である。苗が定植された畝には雑草もいっしょに生えている。
早坂さんやスタッフは、農業大学校で学んだり他の農家での修業経験はあるものの、ほとんどが自らの手で収穫するまで育てるのは初めてというなかで、有機農業をスタートさせた。「でも、宇陀には有機農業の経験豊富な農家も多く、お手本が身近にあるのは心強いし、2年目になって、自分たちの野菜が先輩たちと同じように育っているのが何よりうれしいです」と話す。思ったようにいかないこともあるだろうが、ほんとに楽しく農業をしていると感じられた。
5月に入ったこれからの時期、スナップエンドウ、ソラ豆、玉ネギなどが旬を迎える。おすすめは、ようやく安定して育てられるようになった玉ネギとのこと。「収穫はまだ3回目ですが、出荷先の評価もよいので、収量を増やしつつあります」
この新玉ネギ、品種は、早生では定評のあるOP黄。丸っこい球で、日持ちがよいとされる。吊り玉にすれば12月まで貯蔵できるそうだ。課題となるのは、収穫がいっときに集中することで、収穫後のさばき方を考えておかねばならない。
早坂さんは「大事に育ててきたので、味には自信があります。なにしろ、畑で野菜を味付けしていますから。市場に出すときは“無農薬新玉ネギ”と打ち出して、安心・安全を強調するなど、他との差別化をはかりたいですね」と話す。
まさに、生産の先まで視野にいれて続けていくのが、現代の農業だ。ハンサムガーデンにも「有機農業への取り組みを基本に、生産、流通、販売、食の提案まで一貫して行いながら、それぞれ必要なノウハウを身につけていき、将来的な事業拡大へつなげていきたい」願いがある。
これからの日本、農業の競争力を高めていくことが求められている。その手段のひとつが、企業も参入しやすくする農地法改正だった。各地の挑戦は始まったばかり。ハンサムガーデンのように、地域に根ざし、地に足の着いた農業がどのような展開をみせてくれるのか、注目していきたい。
[取材日:2016年4月28日]



<写真提供:ハンサムガーデン>
無農薬新玉ネギ
- 取材協力
- 東果大阪株式会社
http://www.toka-osaka.co.jp/ - ハンサムガーデン宇陀農場
- 電話番号:0745-82-5010
*野菜や出荷先については、ハンサムガーデンに直接お問い合わせください。 - 参照
- ・農林水産省「有機農業について」
http://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1005/spe1_01.html - ・農林水産省「企業などの農業参入について」
http://www.maff.go.jp/j/keiei/koukai/sannyu/kigyou_sannyu.html
[ 掲載日:2016年5月19日 ]