小松菜

しものファームは、小松菜に的を絞った専作に早くから挑み、規模を広げながら合理化も図るなど努力して現在の生産態勢を築きあげてこられました。いわば、都市農業の見本となる姿を示してくれています・・・今回は、生産者の取り組みにも注目してほしいと促す流通関係者のレクチャーを受けながら、堺市へ向かった。
耕作地183a(5500坪)、年間供給量340tのほとんどが小松菜という経営規模である。全体なんて見て回れそうもないから、南区片蔵の長峰ハウスと呼ばれる施設で話をうかがった。大型の鉄骨ハウスが高台に16連棟、12連棟と建ち並ぶ光景は壮観だ。
迎えてくれたのは、しものファームの代表、霜野要規さん。「耕作地と施設は7ヶ所に分散していますが、今はほとんどここと同じ連棟ハウスで栽培しています。農業は会長の父からで、昭和55年頃に小松菜の専作を始めました。以来、生産や経営などのさまざまな課題を父の信念でひとつずつ克服しながら、今に至っています」
小松菜は緑黄色野菜のひとつ、栄養摂取の面からも日常的に必要とされる野菜だ。アクが少なく、調理に手間もかからないとあって家庭でも重宝される。そうした需要を背景に、近年は品種改良も進み、ほぼ1年中栽培され市場に出回っている。
「小松菜は200種以上の品種があり、これまで試した結果“ひとみ”の品種を中心に、年7作栽培しています」ハウスの中で収穫前のひと株を持ち、霜野さんは「緑が濃いのは、栄養が行き渡っている証しです。軸は柔らかいけれどしっかり立ち、葉が卵形のきれいな姿に育っているでしょう。冬の時期、特に2月これから出荷するのは、寒さに耐えて甘味が増し、シャキっとしておいしいですよ」と話す。
流通関係者によれば、最近のニュースからもわかるように、野菜は天候や病害虫など環境の変化に影響を受けやすく、安定供給が大きな課題となる。しものファームは、このスケールで常に質と量を保ちながら安定して供給できるのが強みという。
霜野さんの説明を聞きながら、長峰ハウスの園内を見て回る。大型連棟ハウスは鉄骨で頑丈、しかも全体に防虫ネットや防草シートを完備。その他、温度管理を行う、夜の露対応雨センサー付き自動天窓開閉装置、秒単位で調節できる自動灌水装置、等々。「灌水は、会長の父が毎日、天気や小松菜の育ち具合をみて入力調整しています」というように、機器頼りではなく、長年の栽培経験が基にあっての効率化であるのが理解できる。
それに、と霜野さん。「安心して食べてもらえるものを育てるのが、私たちの使命です」そのため、農薬を減らした環境保全型農業を実施。堆肥の他、土や肥料には有機成分配合を使用、水は地元・深井の地の利を生かした地下水を使うなど配慮している。そうして、しものファームの小松菜は、大阪府のエコ農産物認証制度に基づいた“大阪エコ農産物「泉州さかい育ち」”として出荷。小松菜は、平成19年、なにわ特産品のひとつ“大阪こまつな”として認定されてもいる。
さらに、しものファームの活動へと話は続くのだが、こうした取り組み内容についてはWebサイトで詳しく情報公開されているので、ご確認いただきたい。関西の大きな市場をひかえたなかで、家族を中心としたこういう農業経営のかたちもあるのだと、あらためて農業の可能性を知った思いである。
[取材日:2016年1月30日]


姿形の良さは、灌水の管理が行き届いていればこそと話す。


小松菜
- 取材協力
- 東果大阪株式会社
http://www.toka-osaka.co.jp/ - しものファーム
- http://shimonofarm.net
*小松菜については、しものファームに直接お問い合わせください。 - 参照
- ・厚生労働省「緑黄色野菜」について
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-037.html - ・農林水産省「環境保全型農業」について
http://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/hozen_type/ - ・大阪府エコ農産物認証制度について
http://www.pref.osaka.lg.jp/nosei/syokunoanzen/ekonousanbutsu.html - ・大阪エコ農産物「泉州さかい育ち」について
http://www.city.sakai.lg.jp/sangyo/nosui/nosuisangyo/chisanchisho/sakaisodachi.html - ・大阪府なにわ特産品について
http://www.pref.osaka.lg.jp/nosei/naniwanonousanbutu/tokusanhin.html
[ 掲載日:2016年2月19日 ]