西洋カボチャ

北野農園は、大阪府貝塚市で泉州水ナスを育てる水ナス農家だが、今回は、同じ市内にあって別の野菜を育てている畑を訪ねた。北野農園で修業中という薮内和也さんに案内していただいた。
畑には作物の畝が隠れるほど雑草が生え、全面、草まみれである。手入れをしていない訳ではなく、あえて自然農法に近い育て方を試しているらしい。ハウスで管理しながら水ナスを育てるのとは違って、ここでは、薮内さんをはじめ北野農園で働く者が選んだ野菜を各自考えながら栽培しているというから、いわば実験農場だ。
「今ちょうど、西洋カボチャがいい具合に育っていますよ」と言いつつ、薮内さんは畑の中へどんどん入っていく。追いかけて足を踏み入れ、よく見ると、雑草や葉の間に蔓が伸びていて、そこかしこにカボチャの実がころがっているのだった。
「このラグビーボールのような独特の形をしているのは、ロロンという品種です。
肉質はキメ細かく、ホクホクしているのに食感は滑らか。水分が多いからでしょうね。味は甘くて、天ぷらにするとおいしいですよ」手渡してくれたロロンは、ずっしりとした手応え。もう少し日が経つと2kgくらいにまで育つそうだ。
「こっちが、プッチィーニ」と取り上げたのは、手のひらサイズのミニカボチャだ。ミカンのような橙色の縞模様がついている。「飾りに置いても可愛いと、女性に人気があります。皮が薄いので、火が通りやすいし、小さいからデザート感覚で食べられます。種のところをくり抜いてグラタンの料理にも使えますよ」
畑の中で、熱く説明するのを聞けば、藪内さんたちがいかに大事に育てているかが伝わってくる。カボチャは他の野菜に比べて丈夫というか、ほったらかしでも育つのでしょ、と半可通の話をすれば、とんでもないと睨まれた。
「育つのに任せているみたいですが、自然なように育てるのは、それなりに手間がかかるものなんです。とくに梅雨の時期は、葉が濡れたままにしておくと病気になりやすいので、毎日見にきてますし」と、藪内さんは強い調子で返す。「とにかく、このおいしさを広めたくて頑張っているんですから」
水ナスには、地域の特産物になるまで長い年月をかけ、その栽培方法が練られている。加えて、地域ごと、農家ごとの独自の育て方があり、現在も進化しているといえるだろう。藪内さんたちは、そうした確立された方法を学ぶことを基礎にして、新たな作物に挑み、自分たちで試行を重ねていくのだ。水ナス農家のつくるカボチャというだけで、どこか特別な価値が生まれるのもわかるような気がする。
さて、その味だが。カボチャは畑で生をかじる訳にはいかない。見本にいただいたけれど、「穫ってすぐより、2週間ほど常温で保管しておけばおいしさは増しますよ」と言われたのだ。そろそろ食べ頃のはずだが、味はまだ確かめずにいる、悪しからず。
[取材日:2015年7月7日]



西洋カボチャ
- 取材協力
- 東果大阪株式会社
http://www.toka-osaka.co.jp/ - 北野農園のHP
- http://www.kitanofarm.com
*西洋カボチャについては、HPを通して直接お問い合わせください。
[ 掲載日:2015年7月24日 ]