サボイキャベツ

関西の主要都市近郊で、市場に出せそうな珍しい野菜を探している流通関係者から、奈良にサボイキャベツがあると教えられ、生産者のもとへ出かけた。
サボイキャベツは縮緬(ちりめん)キャベツとも呼ばれ、葉が縮れ、シワシワになっている。ヨーロッパでは多くの品種があるから、広く知られた野菜なのだ。近年、日本でも栽培に取り組む農家が増えているようだが、関西はまだ希少らしい。
訪ねた生産者は、米田敦彦さん。畑は奈良県橿原市にある。石舞台古墳を中心に整備された国営飛鳥歴史公園が近いこともわかって、土地につながる古代を思う。
7千株ほどあるサボイキャベツは、みな元気よく葉を広げていた。その様子は見慣れた一般的なキャベツと変わらないのだが、葉はごわごわと厚く、確かに細かい凹凸がついて縮れている。「これから結球していくので、収穫まであともう少しかかります。11月頃には、大きなものなら1玉2キロくらいに育ちますよ」と米田さん。
特徴を尋ねれば、「普通のキャベツが水っぽく感じるほど濃い味です。葉のシワにスープがよくからむので、煮込み料理にあうといわれていますが、ロールキャベツがおすすめですね。葉がしっかりしていて、巻いても戻らないというか、型崩れしない。ステーキを上にのせる使い方にもあうと思います」と、返ってきた。
じつは、米田さん、農業を始めて5年目という。それまで食品販売会社に勤めていたサラリーマンからの転職。とはいえ、実家の畑を継いでいるし、ゼロからの新規就農ではなさそうだ。育てる野菜を選ぶにしても、食品を扱っていたから、目のつけどろこがちがう。「販売単価の高いものとなれば、西洋野菜になるんです」
しかし、予想していたとおり、農業は難しい。「パプリカやチコリから始めたのですが、うまく育てられなかったですね。それから種類を換え、試行しながら。当然ですが、種類ごとに育て方、貯蔵や保管、出荷などの仕方がちがう訳です」
今ではようやく数種が出荷できるようになっているという。なかでも主力がサボイキャベツである。「オランダ産なら8,000円で販売されているのを知って、是が非でも育てられるようにしたいと思ったのです」国内産で普通のキャベツの10倍近い値段がついているのを見れば、栽培に力も入るのがわかる。課題は、流通である。
「高価な西洋野菜は、需要が限られてきます。個人の生産者さんは、レストランとか小口の相手を自分で開拓していくことも必要になります。それに、珍しいものは、数の少なさに価値があるのですが、出回りの数量が増えれば単価は下がっていきますからね」流通関係者が話すように、そういう市場原理を踏まえて生産していかなければならないのだ。
ただ、珍しいものをつくればいい、という訳ではなく、それを認めてもらい商売として成り立たせる。当然のことなのだが、あらためて、生産者の置かれた厳しさの一面を垣間見る思いだった。
[取材日:2014年9月26日]




サボイキャベツ
- 取材協力
- 東果大阪株式会社
http://www.toka-osaka.co.jp/ - 米田さんの「サボイキャベツ」が購入できる通販サイト「一品一会」
(ご利用される場合は下記サイトと直接お取引ください) - http://item.rakuten.co.jp/1pin1e/
[ 掲載日:2014年10月6日 ]