やまさき夢メロン

生産者:藤木農園 藤木 茂さん、悦子さん
兵庫県宍粟(しそう)市

兵庫県で、高級品として知られる夕張メロンに見劣りしないメロンが作られていると評判を聞き、取材に出かけた。所在地は、鳥取県と岡山県に接する宍粟(しそう)市。JR姫路駅で姫新線に乗り換え、北上する。訪ねた先は、藤木農園。藤木茂さんと悦子さん、夫婦がそのメロンの生産者だ。

メロンは、ウリの仲間である。農水省では、果物ではなく野菜(果実的野菜)に分類される。検索をかけると、登録品種は119件あった。例えば、夕張メロンは商標であって、品種名は夕張キングメロンという。藤木農園で育てているのは、夕張キングメロンに近い品種の「札幌キングメロン」とのこと。こちらにも別称があって、公募により「やまさき夢メロン」の名が付けられているが、以下は、略して夢メロンで通させてもらう。

芳香が強いメロンは、総称でマスクメロンとも呼ばれる。夢メロンはもちろん、そのひとつ。果皮にネット状の網目がつき、果実は橙色をした赤肉種である。メロンらしい姿形に加え、実の色までも、夕張メロンとよく似ている。

「うちの特徴を挙げれば、香りがよいことです」と茂さん。「それに、とろけるような甘い食感ですね。果肉は皮のぎりぎりまで食べてもらえます。なにしろ、すべてが生食用。一つひとつ大事に育て、食べ頃を出荷していますから」

藤木農園は茂さんの実家だが、茂さんは高校卒業後、北海道農業専門学校で農業を学んでいる。卒業しても、しばらくは職員として勤務。その間にメロンなどの経済栽培を習得したという。それに、北海道での最大の収穫、道産子の悦子さんを嫁にもらい、心強いパートナーとともに実家へ戻ってきた。

現在、米の他、ジャガイモ、タマネギ、白菜や大根などの野菜を栽培。なかでも、夢メロンに加え、トマト、スイートコーンが兵庫県認証食品「ひょうご安心ブランド農産物」の認証を受けている。「札幌キングメロン」を育てていること自体が全国的にも珍しいというから、藤木夫婦の実力がうかがえよう。

悦子さんにメロンのハウスを案内してもらう。藤木農園では、メロンを“地這いづくり”といって苗を地面に這わせたままで育てている。これだと、地熱を受けやすくなるし、果実がぶら下がるのではなく地面に置いて安定させられるという。

「1月中頃に種を蒔き、3月に定植。約1ヶ月で花が咲き、やがて実が生ります。今は、どの実を夢メロンに育てればいいか選定中です」そして、これからが最も注意を要するのだった。果実の成長にあわせ、果皮に、あのネットができていく。

「果実が太るのを見て、水やりと換気を調整していきます。メロンは実の生長が早いので、果皮に小さなひび割れができてきます。それが、きれいな網の目に伸びてくれるよう、常に微調整が必要です。太るのが早すぎると割れてしまいますから」

実を育てて収穫するのではなく、育てながら人為的に作り上げるという工程が必要なのだ。商品価値の高いメロンは、まさにプロにしかできないと実感した。

しかし、藤木農園はメロン専門ではないから、栽培できる数は限りがあり、年々評判になるほど注文にさえ応じられないのが現状という。「夢メロンは今年で17年目になりますが、毎年、収穫までは気が抜けません。目下は、秀品率をいかに高めていくかが課題です。少しでも多く、待っておられるかたに届けたいですし」

夢メロンは6月に入らないと“完成”しない。今回は、まだ、その途上ということで、残念ながら試食はできなかったけれど、優れた作物が育っているのは確かだと思えた。

[取材日:2014年5月17日]

やまさき夢メロンを栽培するハウス。奥行きは100mあり、現在は、約250本が育てられている。
地這いづくりだから、支柱のようなものはなく、葉の間に隠れているように実が生っている。
1本にだいたい4個の実を選別。初めは楕円形だが、生育するにしたがって、球形になり、果皮のネットがくっきり浮き上がってくるという。

やまさき夢メロン

取材協力
東果大阪株式会社
http://www.toka-osaka.co.jp/
藤木農園
電話(ファックス兼用):0790-62-1727
*フェイスブックで日頃の農作業の様子などを公開しています。
https://www.facebook.com/fujikifarm
兵庫県認証食品「ひょうご安心ブランド農産物」については、以下をご参照ください。
http://web.pref.hyogo.lg.jp/af07/af07_000000008.html

[ 掲載日:2014年6月5日 ]