高山真菜(まな)

生産者:高山生産者組合 上野 美代子さん
大阪府豊能郡豊能町

今季何度目かの寒波が近づいているなか、よりによって寒いほうの大阪北端へ向かった。目指したのは、大阪府豊能郡豊能町。その高山地区だけで栽培され、この時期にしか採れないという菜っ葉、高山真菜(まな)を取材するためである。

到着地の標高は450m。車から降りると、さすがに外気は痛いほど冷たい。冷蔵室に放り込まれたような体感だ。しかし、とけないで雪の残る“田んぼ”には、緑の葉が見えている。高山真菜は、寒くても露地で育つ、冬の貴重な葉物野菜なのだ。

なにわの伝統野菜に認定(大阪府)されているので、名前は知っていたのだが、実際に生えているのを見るのは初めて。なにしろ、高山真菜は、他の土地で種から育てたとしても高山地区で育てるのと同じようにはできないらしい。だから、自ずと採れる数量は限られ、市場にもあまり出回らないので、幻の野菜と言われている。

今回、生産者を代表して上野美代子さんに話をうかがった。「300年の長い間、地区の皆さんが大切にしてきたものです。私も嫁に来て40数年、毎年伝えられている方法で育てているだけ。種をまき、育てて収穫し、種をとるという繰り返しです」

この辺りでは、5月に田植え、9月には稲刈りのサイクルとか。その端境期に田んぼで育てられるものをということから、菜っ葉の栽培が始まったと聞く。「稲田なので、ほんとに種をまくだけなんです。葉が育つころの冬は、害虫なんていませんから防虫剤は必要ないし、長い間に地域の気候にあうようになったと思われます」

大阪しろなのレポート(44回参照)にあるが、菜っ葉は交雑しやすい。高山地区は山間の地形にあるため、他の菜っ葉と混じり合うことなく原種の性質が守られてきたようである。さらに寒さに耐えることで、鍛えられて進化したのか、今では高山真菜と呼ばれる独自の菜っ葉になっているのだ。

大阪府の現「食とみどり技術センター」の分析によれば、小松菜、春菊、野沢菜と比べ、ビタミンA効力のカロチンやビタミンCが多く含まれているという。冬の間のビタミン補給という点でも、古くから重宝されてきたのがわかる。

「寒さに強いのに、茎まで柔らかく、さっと茹でるだけでシャキシャキと食べられます。味は、甘くてコクがあるのが特徴。菜の花特有のほろ苦さと合わさることで特有の風味になりますよ」と上野さん。お浸しや辛子和えの他、鍋ものに使えるし、細かく刻んで炒飯に入れるのもよいという。

もちろん、菜っ葉であるから、生育すると菜の花が咲く。花の蕾は菜花、花が咲くまでの茎ごとは花野菜として親しまれているとおり。高山真菜は、この2月が菜っ葉としての旬にあたる。3月まで収穫できるのだが、だんだんと花が咲いてゆく。

伝統野菜にして、露地栽培の希有な葉物が、せめて2月だけでも、もっと広く出回ればいいのにと思うのだが、課題は流通にあった。「ゆうても菜っ葉ですから、運送費をかけてもいいと注文してくれるのは限られてきます」と上野さん。

数束をいただいて帰ったところ、ビニール袋に入れたまま寄り道して時間が随分経ったのに、取り出せば、しゃんとしている。まさに野性的というか、こんなに元気な菜っ葉の姿は初めて見るようで驚いた。そして、おいしくいただいたのである。

そこで提案。数店でまとまるとか、流通業者に無理をいうとかして、取り寄せる段取りをつけ、来年の2月には早めに注文してみるのはいかがでしょうか。

[取材日:2014年2月6日]

雪が残る田んぼ。高山地区では、計100a程の田んぼで高山真菜が育てられている。別の畝では、採種用に育てられていた。
寒くても、生育の様子は見なくてはならない。高山真菜を育てる農家が減ってきているのが心配と話す上野さん。
ぎざぎざの葉と丸い葉が同じ束に生っているのが特徴。雪の下でも、よく見れば元気よく育っている。
上野さんたち高山生産者組合では、高山真菜の加工食品も作っている。「真菜漬」はそのひとつ。塩で漬けただけの無添加食品。冷凍しておけば1年はおいしく食べられるという。

高山真菜(まな)

毎年3月最終日曜日には、「高山真菜まつり」が開催される。有料だが、田んぼに入って、高山真菜を摘み取れるという。興味のあるかたは、調べてください。
取材協力
東果大阪株式会社
http://www.toka-osaka.co.jp/
高山真菜についての問い合わせは、以下へ。
高山生産者組合 新谷龍一さん 電話:072-739-0854
調理法をまとめた冊子『豊能町特産 なにわの伝統野菜 高山まなア・ラ・カルト』は、以下のアドレスへ。
http://www.pref.osaka.lg.jp/hokubunm/alacarte/0804manaala.html

[ 掲載日:2014年2月24日 ]