果樹王国の柑橘たち

日本で「果樹王国」を称える地方自治体は、和歌山県、山梨県、山形県、なんと3県もある。それぞれ王国といえる根拠はもっているようだが、生産量の日本一で競えば、和歌山県なら、梅、柿、みかんを挙げられる。
和歌山のみかんといえば、地域ブランドとして認定された“有田みかん”がよく知られている。しかし、現状は、一つのブランドで済むほど単純ではなく、いろいろ事情があるらしいと聞き、現地へ確かめに出かけた。
因みに、地域ブランドは、地域団体商標制度の施行された平成18年から始まり、今やその制度に関わりなく認定されるという。地域団体商標としての登録件数は、既に約500もある。各地でさまざまなブランドがあふれるくらい生まれているのだ。
農水省は、みかんを柑橘(かんきつ)属の仲間とする。現在、柑橘属には登録品種だけでも117件あり、みかんも他の青果と同様に、新しい品種が続々と出回っている。
訪ねたのは、和歌山県田辺市上秋津のみかん農家、紀州原農園。原家七代目の原拓生さんに話をうかがった。上秋津の町は、かつて秋津野(あきづの)と呼ばれ、和歌山県でもみかんと梅の栽培が盛んな地域として知られている。
「うちでは、祖父の代から本格的にみかんを栽培するようになりました。戦後からでも、これまでの歩みには山あり谷あり。みかんだけでなく、地域全体で梅の栽培にも力を入れたし、柑橘属のいろんな品種を手がけるようになりました」
原さんは、一つのブランド、銘柄に頼ることなく、少量多品種路線できた結果、地域に新たな価値がもたらされたという。それは、秋津野が、酸いも甘いも含め現代の多様な嗜好に応えられる多様な商品が揃う生産地になっていたことだった。
「地道な努力もあって、今では、この地域で約80種の柑橘が栽培されています。品種によって収穫時期がちがいますから、一年を通して収穫できるようになっているのです」という話から、総称して「果樹王国の柑橘たち」と呼ぶことにしておく。色、形、風味はもちろん、実にさまざまな味が楽しめるのだ。
原さんは、和歌山県認定のエコファーマー。紀州原農園の柑橘たちは、有機肥料で育てられ、除草剤も使わないなどできるだけ自然に近い環境で育てられている。
果樹園は山の斜面にあり、露地だから日頃の管理は大変だが、たいていの品種が木に生ったまま完熟するまで育てる。「もいで間を置かず、葉付きで出荷しています。樹上完熟と呼んでいますが、風味も新鮮なおいしさを味わってもらえます」
オンリーワンを目指すブランド化が、数が増えるにつれて効力を減退させるなか、多様性で活路を開く道もあるのだと、「果樹王国の柑橘たち」が示しているようだ。
【果樹王国の柑橘たち】収穫カレンダー
9月 | 極早生みかん、すだち、レモン(3月頃まで) |
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10月 | 極早生みかん、ゆら早生 |
11月 | 早生温州、シークワーサー |
12月 | 完熟みかん、花柚、本柚、紀州みかん、橙、仏手柑、太田ポンカン、早香、柑子 |
1月 | 晩生温州みかん、ポンカン、ハイネ金柑、宮内早生、伊予柑、清峰、天草、安藤みかん、唐みかん、スイートスプリング、早生はっさく、紅はっさく、津之香、ありあけ、朱見、西之香、ライム |
2月 | はるみ、サザンイエロー、文旦、ネーブル、黄金柑、せとか、あまか、はっさく、長実金柑、ポンカン、伊予柑、春峰 |
3月 | 不知火(デコポン)、三宝柑、清見、太陽、甘夏、マーコット、タロッコ、モロ |
4月 | 春光柑、香橘、寿柑、福原オレンジ、ナルト柑、小林オレンジ |
5月 | カラマンダリン、日向夏、オレンジ日向 |
6月 | セミノール |
7月 | バレンシアオレンジ(8月中旬まで) |
[取材日:2013年4月3日]



詳しい案内は:http://agarten.jp

果樹王国の柑橘たち
- 取材協力
- 東果大阪株式会社
http://www.toka-osaka.co.jp/ - 紀州原農園
- E-mail:harafarm@nike.eonet.ne.jp
- 参照
- ・地域団体商標制度について
http://www.jpo.go.jp/torikumi/t_torikumi/t_dantai_syouhyou.htm - ・和歌山県エコファーマーの概要
http://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/070300/071400/ecofamar/gaiyou.html
[ 掲載日:2013年4月11日 ]