大阪しろな

生産者:藤井 進さん
大阪府堺市

今回訪ねたのは、まさにプロと呼べる農家。なにしろ、野菜1種類を専門に育てているのだ。それも、なにわの伝統野菜(大阪府認定)、大阪しろな、である。

生産者の藤井進さんは、流通関係者の間で「これほど見事な大阪しろなを、1年通じ安定して、栽培できる人は他にいない」と、評判がよい。供給には、確実に一定の収穫量を見込めるのが大切だが、それに良品となれば、評価も高いはず。

実際に、堺市中区の畑(ハウス)を見せてもらうと、生育した菜っ葉がびっしり並んでいて、壮観な眺めだった。葉の緑も生き生きと鮮やかな色で、おいしそう。

そうしたハウスが、大小合わせて15、計50aあるという。大阪しろな専門になった経緯について、藤井さんは「育ったのを見せて、ほめられるのがうれしいから、なお、力を入れるうち、これしか作らなくなってしまいました」と、話すのみ。

よく訊けば、葉物類を育てるときは、注意が必要という。例えば、小松菜のような“生命力の強い”菜っ葉が近くにあれば、花が咲くまで放っておくと、こぼれ種などが混じる可能性があるらしい。

だから、大げさではなく純血を守るためには、品種を絞って栽培するのがよいそうだ。そういう観点からみれば、藤井さんの限定栽培は、理に適っている。それに、大阪しろな、年に7回収穫できるという。専門でも、十分に可能なわけだ。

とはいえ、伝統野菜をここまで栽培させるには、苦労もあったはず。「今のところ、輪作でもやっていけるように、畑の土にはいちばん気をつかっています」と、藤井さん。種の選定や有機肥料の堆肥配合などに、独自の方法を確立させている。

「夏は、種から28日で育ちますので、風通しをよくするために苗の間隔をあけておく。反対に、この時期、冬は生育に2ヶ月ほどかかりますし、寒いから、間隔をつめたほうがよいのです」ハウスであっても、露地に近い感覚の栽培のようだ。

「とくに、冬は冷えるほど甘味が増します。それに、寒いと害虫もいないし、雑草も生えないから、いい状態で。これから出荷するのが、最もおすすめなのです」

その大阪しろな、苦味が薄く、菜にしては淡い。大阪らしくない、控えめな味が特徴である。逆に、それだけ使い勝手がよい食材ともいえる。「もともと、大阪では、味を付けて食べる菜っ葉として流通していたようです。しろ菜、しゃくし菜とも呼ばれ、漬け物に向いた“漬け菜”の仲間でもありました」と藤井さん。

続けて、大阪しろなをおいしく食べるには、次のような話。油で炒めるよりは、煮浸しで味を付けるほうがよい、というのが基本。例えば、すじ肉を薄味で煮込み、それに仕上げで浸すと、よりおいしい一品になる。また、新しい食べ方として、ロールキャベツのように、葉で具をくるみ煮込む料理にも合うとのこと。

それに何より、塩だけで一夜漬けするのが、最もおいしいということだった。「糠に付けるには水気が多くて合わないのです。要は、白菜と同じように使ってもらうのがいいようです。うちのは、茎も太めで、歯切れがよいと言われます」

近年、なにわの伝統野菜を育てる農家が多くなっている。藤井さんの話をうかがい、なにわの伝統野菜も次の段階へと進んでいるのだと実感。ただ珍しいだけではなく、使い勝手のよい野菜として、さらによくなっていくと確信するのだった。

[取材日:2012年12月21日]

堺市にあるハウスのひとつ。生育した大阪しろながびっしりと並ぶ。
収穫する藤井さん。葉脈が白いのと、軸が白く平たいのが特徴。ハウスの中の土は、有機肥料でねっとりと肥えた土になっている。
大ぶりで葉が厚いのが藤井さんの大阪しろな。元気よく育っている。

大阪しろな

取材協力
東果大阪株式会社 / http://www.toka-osaka.co.jp/
藤井さんの大阪しろなが購入できる通販サイト「一品一会」
(ご利用される場合は下記サイトと直接お取引ください)
https://www.rakuten.co.jp/1pin1e/

[ 掲載日:2013年1月10日 ]