国産レモン

大阪でレモンを栽培している果樹農家があると教えられ、大阪府和泉市に生産者の井坂清和さんを訪ねた。近年、国産レモンの生産量が増えているらしい。
その理由として、国産レモンにはポストハーベスト農薬の心配がないことが挙げられる。ポストハーベストは、収穫(ハーベスト)後(ポスト)の処理を指す。
例えば、海外から輸入される果物には、収穫後に殺菌剤や防カビ剤などの農薬が散布されているという。輸送や保管される間に、傷んだり腐ったりしないためだ。国内産には、そうしたポストハーベスト農薬の使用は禁止されている。
皮をむいて食べる果物なら、気にならないかもしれないが、レモンは皮を使うし、丸ごとかじったりする。それが農薬まみれとわかれば敬遠するだろう。実際、輸入されるレモンは減少傾向という。替わって、国産レモンに注目が集まる。
しかし、レモンは日本で栽培するのは難しくないのか。井坂さんは「他の柑橘類と同じように育てられますよ。どちらかと言えば、コツがいりますが」と話す。
井坂さんの家はもともとミカン農家だった。「畑はミカンを育てて、肥えているんです。ところが、肥えた土では、ミカンは甘くならないのです」ミカンは甘い果物、が常識になりつつある昨今、それでは育てても苦労の甲斐がない。
市場原理におされ、井坂さんのところでも方向転換が求められたようだ。古くから育てていた花ユズに加え、10年程前にレモンの栽培にも着手し、切り替えた。
両方とも柑橘類本来の酸っぱさが命だし、甘いほうがいいなどと“酸味を嫌う”嗜好に影響されていない。「柑橘類は定着するのに時間がかかりますが、レモンはようやく一定の量を収穫でき、市場に出せるようになりました」と、井坂さん。
「酸がきついものほど、葉や茎にトゲがあるのです。風が強いと実がトゲで傷つくので注意しなければなりません。毎年、台風が来ないように祈ってます」
レモンの木に体力をつけるため、畑は腐葉土でさらに肥やされている。肥料は有機肥料だけを使い、農薬は可能な限り少なくするなど配慮して育てられている。
「花ユズもレモンも、皮ごと使われても安心してもらえるものです。それに、今は注文を受けてから、実をもいで、とれたてをパックに詰め出荷していますから、新鮮ですよ。特にうちのレモンは果汁が多いと好評をいただいています」
花ユズは年に1度の収穫だが、なんとレモンは、年に数度収穫できるという。この時期は実がまだ青い(グリーンレモンと呼ばれる)状態で出荷される。熟すほど、馴染みのある黄色になっていくが、果汁はさらに多くなるらしい。
こうして、話をうかがい、実物を見ると、酸味も香りも爽やかなグリーンレモンが国産レモンのイメージとして相応しいと思えてくるのだった。近場で得られる国産レモンが広く知られ、市場に通用していくのも案外早いのでは、と感じた。
[取材日:2012年11月6日]




国産レモン
- 取材協力
- 東果大阪株式会社 / http://www.toka-osaka.co.jp/
- 井坂さんの国産レモンが購入できる通販サイト「一品一会」
(ご利用される場合は下記サイトと直接お取引ください) - http://item.rakuten.co.jp/1pin1e/
[ 掲載日:2012年11月15日 ]