間引き菜

農産物生産販売ナカスジファームの代表、中筋秀樹さんは、農家の家業を継いで17年目。10年程前から、人を育てることに力を入れている。「野菜を育てるだけではなく、生産者になる人も育てていく必要があると思いましてね」
「うちの周りを見れば、畑仕事している人には高齢者が多いのです。その息子とか次の世代になると、農業に魅力を感じないのか、引き継ぐ人が少ないですから。このままだと、作り手のいない畑だらけになっていくでしょう」
しかし、新しく農業を始めたいと思う人は各地にいる。そこで中筋さんは、そういう希望者を引き受け、野菜作りを働きながら学べるような態勢を整えていった。近年は、海外から日本へ出稼ぎに来る、農業研修生も受け入れている。
「ささやかですが、一人でも多く後継者になってくれればいいなと思いながら教えています。自ら現状を変えていかねば、日本の農業に未来はありません」
今や、ナカスジファームでは、研修生やパートも含めれば農繁期で約40人が働く。畑は、周辺の休耕地を借りたりして広げ、ハウス230a、露地100aになる。主力の農産品は、大阪キュウリと大阪ナス。出荷先も、各市場の他、直売所や量販店との契約などと開拓していき、年商1億3千万円の組織になっている。
「ナスは半促成。キュウリは抑制。季節をずらしながら収穫できるように栽培し、長い期間にわたって出荷するようにしています。それでも、農産物は天候などの条件次第ですから、毎年同じという訳にはいかず、気がぬけません」。
「野菜には育てている人の気持ちが表れるんです。うちは皆で工夫しながら心を込めて作っていて、その良いところをアピールしたいのです」と、中筋さん。キャラクター制作など、ナカスジファームのブランド力を高める努力も怠らない。
もちろん、商品開発にも取り組む。新種や珍種などを合わせれば、毎年約30種の野菜を育てている。最近のおすすめは、サラダナスという。「大阪水ナスと小ナスをかけ合わせたようなナスです。ミニ水ナスとも呼べる小振りなんですが、実はしまっていて、青リンゴのような瑞々しい味わいで、生食に向いてます」
そこに、別の声がかかった。「これからの時期は、間引き菜ですよ」と、プッシュするのは、中筋さんの妻、優美さん。中筋家に嫁いできてから野菜ソムリエの資格を取得し、今ではナカスジファームの野菜を広める役割を担う。
「ダイコンやワサビ菜は、苗が育つと密集するのを間引いていくのですが、若育ち状態の菜は、成長したのとはちがうおいしさがあるんです」と、優美さん。
とくにワサビ菜の間引き菜が、おすすめという。「ワサビ菜自体は、ようやく家庭でも使われるようになってきましたが、間引き菜は珍しいし、プロ向けといえます。生食でもいいですが、揚げると辛味もきいて、おいしいですよ」
当然ながら、早めに摘むものだし、何度も取れないので希少だ。出荷できる量も期間も限られる。注文は早めにお願いしますと言い、優美さんは去っていく。
中筋さんは「中国やベトナムの研修生が、それぞれの国に帰り、農業を始める。それも、うちで培った技量を発揮し、外国に出荷できる価値のある野菜作りを広めてもらう。そうしたネットワークを築いていきたい」と、夢を語るのでした。
[取材日:2012年9月25日]







間引き菜
- 取材協力
- 東果大阪株式会社 / http://www.toka-osaka.co.jp/
- 「間引き菜」が購入できる通販サイト「一品一会」
(ご利用される場合は下記サイトと直接お取引ください) - http://item.rakuten.co.jp/1pin1e/
- ナカスジファーム
- http://www14.plala.or.jp/nakasuji_farm/
[ 掲載日:2012年10月4日 ]