西洋野菜

生産者:シャンデエルブ 田中 秀樹さん
兵庫県姫路市

姫路市の北部に位置する船津町(最寄り駅は、JR播但線溝口駅)へ。ハーブと西洋野菜の研究と生産・販売をおこなう「シャンデエルブ」の田中秀樹さんを訪ねた。

ハーブといっても、フェンネルの花など食べられる花(エディブルフラワー)を栽培し広めようとしているように、田中さんは独自の道を歩む。「平成2年に起業したのですが、当初は食材の仕入れと販売が主でした。そのうち、自分で育てたほうが良いものができると思い、栽培に取り組むようになったのです」

海外の農家を訪ねたり、文献にあたるなど自助努力と試行錯誤を重ね、新しい道を開いていったという。やがて、取引先の料理人と交流するなか、西洋野菜にも注目。その栽培も手がけるように。こうして、本格的に農業と向き合うことになる。

「もう20年になります。初めから、日本ではあまり作られていないものに挑戦してきましたから、おもしろいし、やってこられたのでしょう」

しかし、田中さんには信念があった。「花にも野菜にも、必要のないものは使わずに育てようと思ったのです」その結果、自ずと自然農法になっていたという。「いろいろな考え方がありますが、私の理想は、何も誇らない素農(“すのう”あるいは“そのう”)です」

畑の土は耕さないで、無農薬。肥料も最小限にとどめているのだが、種を蒔いたらほったらかしというのではない。「雑草を刈ったり、やるべきことは多いですよ」

今では、点在するのを合わせると計1haの畑で、多種類のハーブと西洋野菜を育てる。1年を通して何かしらの収穫がある。取引先は、ほとんどがレストラン。関西では「神戸北野ホテル」などの名があがり、関東にも定期的に送っているという。

田中さんは「日本でダイコンといっても、固有の名が付いた品種がいろいろ出回っています。それと同じで、海外ではズッキーニやチコリを例にとっても実に多くの品種があるのです。西洋野菜に、そういう多様性があることを知ってほしい」と話す。イタリアのズッキーニには、ミラノ、フィオレンティーノ、ロマネスコといった品種。チコリには、キオッジャ、ヴェローネ、タルヴィーゾというような具合だ。「広い選択肢の中から、品種選びをしていかねばなりません」

さらに、田中さんには、20年の成果としての自家採種がある。「最初の種は、フランスやイタリアへ行って買い付けてくるのです。それを育て、採種して次の年に育てる。それを繰り返すうちに、姫路の気候や土にあってくるんですね。F1とちがって固定種ですし、自然農法で育てていますから、この地に定着した力強い野菜になっていきます」

「日本では珍しいと思われている野菜でも、海外の地元では昔から育てられてきた伝統野菜だったりします。逆に、日本ではキクイモとして知られているのは、トピナンブールという西洋野菜であることを忘れないでほしい」田中さんには、これまで培ってきた体験とともに、伝えたい思いが山ほどあるようだ。

これからの季節は、根菜類の収穫が続く。そろそろいいかなと、田中さんが掘りだしたのは、パースニップと呼ばれる白いニンジンのような根菜。まだ小さいが、これから太くなっていくという。「柔らかいし、香りが強いので、スープに合います」

その他、サルシファイと呼ばれる西洋ゴボウ、加えて「今ではオリジナルといえるほど長く作り続けてきた“金美”(黄色のニンジン)、“高農鮮紅五寸人参”(赤色のニンジン)なども自家採種を続けてきたもの」と、続いて拝見。

西洋野菜といえば、日本の野菜といってるのと同じようなものだ。大雑把で広いというのを再確認。そのなかで、田中さんの育てるのは、「シャンデエルブ」の西洋野菜として、多くの料理人に価値が認められているのだろうと実感するのだった。

[取材日:2012年8月30日]

これが畑。自然農法だから、一面が草まみれにしか見えない。
草をかきわけ、収穫の様子を見せてくれる田中さん。手にしているのは、西洋ゴボウのサルシファイ。
金美と呼ばれる黄色のニンジン。
高農鮮紅五寸人参と呼ばれる赤色のニンジン。
自家採種された種は、事務所の冷蔵庫(2台ある)に保管されている。
フランスで入手した種球根から育ててきた日本では貴重なエシャロット・グリーズの種球根。

西洋野菜

取材協力
兵庫県芦屋市で自然農法・有機農法の無農薬野菜を販売する「CA(シーエー)」 / http://www.ovca.jp/
シャンデエルブのHP
http://veg-herbs.com
田中秀樹さんへの連絡は以下のメールアドレスへ
E-mail:mint@veg-herbs.com

[ 掲載日:2012年9月5日 ]