スイートコーン

生産者:岡田 如弘さん
大阪府和泉市

猛暑の午後、大阪府和泉市にある畑を訪ねた。目当ての食材は、トウモロコシ。露地栽培だから、強い陽射しを照り返す葉の緑が目にしみる。収穫をひかえ、実が元気よさそうに育っていて、夏の畑はこうでなくては、と思うのだった。

トウモロコシは、米、小麦とともに世界の三大穀物といわれる。農林水産省の統計では、トウモロコシは穀類に分類されるのと、野菜に分類されているのがある。

穀類のトウモロコシは、主に飼料や食品加工用に使われるもので、日本ではほとんどを輸入にたよっている。野菜のトウモロコシは、主に食用で、こちらは国内自給率が100%に近いという。飼料や加工用と食用では、品種がまったくちがうらしい。

訪ねたのは、もちろん食用となる野菜のトウモロコシだが、最近は、食用のトウモロコシをスイートコーン(甘味種)と呼んで区別されるので、以下、それにならう。

焼いたり、蒸したりして食べていた、馴染みのあるトウモロコシが、スイートコーンといわれると、別のものに思うけれど、実際、それほど進化しているようなのだ。

生産者の岡田如弘さんによれば、スイートコーンは、昔ながらのトウモロコシとは別ものと考えていいらしい。「糖度が高くなって甘いし、一粒の実の皮が薄く、生でも食べられるのですから。品種改良というか、新種の開発はすさまじいですよ」

食用のトウモロコシが、変わっていくきっかけとなったのは、味来(みらい)という品種。日本の種苗会社とオランダのブリーダー(育種家)によって開発されたもので、従来のトウモロコシに比べ糖度が高く、瞬く間に各地で育てられるようになった。以来、生でも食べられる甘いスイートコーンの品種が続々と生まれている。

「毎年、最新の品種を探し、種を取り寄せて栽培しているのですが、この数年は、ミエルコーンの品種を主力にしています。ミエルとは、フランス語で蜂蜜のような甘さのこと。それほど甘いし、ボリュームのあるのが特徴です」と、岡田さん。

味来が小振りなのに比べ、ミエルコーンは、太く、粒も大きい。それだけ、1本当たり実の粒がより多くあることになる。畑に生っているのは見慣れたトウモロコシなのだけれど、その実態は大きく様変わりしているのだった。

「他に、種を入手するが難しかった大物という品種も育てているんです。味来の糖度が12とすれば、大物は20ともいわれてます」という岡田さんの話を聞いていると、今や全国のスイートコーン生産地で、同様の試行状況にあるんだなと思えてくる。

野菜のフルーツ化とでも言えばいいのか。スイートコーンは(トウモロコシと異なって)より甘く、より新鮮な成果品を目指した栽培が行われているようだ。生食も可となれば、安心して口にできるものが望ましい。

岡田さんも、大阪府エコ農産物基準をさらに50%減にしたり、有機肥料しか使わないなどの配慮をしているという。畑の側を流れる水路にはホタルが生息しているとか。

夏の畑で思い浮かべたのは、炎天下でも気丈に育つワイルドな姿だったが、そこに生っているのは、実に繊細なトウモロコシだった。

岡田さんは、これまでの経験から、食すには次のような注意をアドバイス。「スイートコーンの甘さは、鮮度が勝負。蒸しておいてから料理に使われることをおすすめします。粒の皮が薄いので、沸騰した湯に1分ほど湯がくだけで十分」

野菜は野菜でどんどん進化しているのだと実感させられる取材になった。

[取材日:2012年7月31日]

炎天下のスイートコーン。トウモロコシはイネ科で、上の先端には、雄花のススキに似た穂が見える。実といっているのは、雌花の種子で、葉に包まれたかっこうになる。先端のヒゲは、雌しべ。
ミエルコーンの出来具合をみる岡田さん。現在は、約1万本が収穫できる。
ミエルコーンは、包葉をむいた実の部分でも、大人の指で輪をつくれないほどの太さがある。

スイートコーン

取材協力
東果大阪株式会社 / http://www.toka-osaka.co.jp/
参照
・大阪府エコ農産物基準に関する情報は
http://www.pref.osaka.jp/nosei/syokunoanzen/kijun.html

[ 掲載日:2012年8月7日 ]