なにわら納豆

納豆は、大豆を納豆菌で発酵させて作る日本独自の食品だ。納豆菌も、もともと稲ワラ(藁)に生息しているのだから、いわば自然の産物である。流通関係者によれば、原料の大豆は11月が収穫の最盛期なので、仕込みなどの時間を勘案すれば、今の時期にできる納豆がもっともおいしいことになるらしい。
そこで今回は、大阪府大東市にある、納豆専門の食品会社を訪ねた。社名は、小金屋食品。1967年(昭和42年)の創立以来ずっと納豆一筋というのも、関西では希少な存在とか。社長の吉田恵美子さんに話をうかがった。
「父の小出金司が、大阪の人においしいと言われる納豆を作るために始めた会社です」その姿を見て育った娘の恵美子さんが、小金屋の納豆作りを継いでいるのだ。
ただ、伝承するだけではない。大豆は国産(遺伝子組み換えでない)しか使わないとか、釜で茹でる製法など、先代から続く基本を守りつつ、2代目の吉田さんは、現代の(大阪人の)嗜好に合わせた納豆作りを積極的に進めてきた。
創業当時の60年代から、発砲スチロールの容器が使われるようになり、納豆は全国の家庭で一般的に食されるほど広まっていった。とはいえ、「大阪は、いまだ常に消費のワースト5」ランクというのだから、拡販も容易ではない。
吉田さんは、「まず、大阪や関西で親しまれること。豆は、食感を残しながら、ふんわり柔らかめ。タレは、だしと同じ。ほんのり甘味の効いたタレをオリジナルで作っています」などの製法を確立し、関西の納豆として特色を打ち出してゆく。
「私の代で、ロゴやマークは一新。パッケージも紙パックに統一しました。紙は、発砲スチロールやプラスチックよりも、エコですからね」。また、工場に隣接させ、直売所「納豆庵こがね屋」を設けるなど、ブランドの整備も進めてきた。
2009年(平成21年)には、新商品「なにわら納豆」を完成。大粒の大豆をワラで直に包み、天然の納豆菌によって発酵・熟成させた納豆だ。商品化にあたり、なにわとワラを合わせ“なにわら”と命名されている。
ワラに包まれた納豆は、既存の納豆菌を培養させて作る納豆とはちがい、ワラに自然発生する納豆菌で作るから、原点回帰のようなもの。試食させてもらうと、納豆特有の発酵臭を感じさせないほど大豆の味が強く、おいしく味わうことができた。
「ワラは、事前の検査で、残留農薬やセシウムなどのないのを確認し仕入れてます。それに、煮沸消毒して使いますから安心です」。ワラを100℃で煮沸すると、納豆菌だけ残り、他の菌は死滅する。それほど、納豆菌は強いのだそうだ。
「なにわら納豆は、大豆の味が濃くて、いろんな料理にあうと、好評です」と、吉田さん。寿司の納豆巻き、オムレツ、パスタ、ぎょうざなどによく使われているようだ。2011年には、バージョンアップさせた「なにわら納豆 金司の味」を発売。なにわら納豆が、糸引きのよく、よりコクのある味になった。
さらに、吉田さんは地域振興プロジェクトに参加し、新商品を開発させている。容器は、地元・大東市の間伐“竹”を再利用。竹の調達や商品開発の仕組みづくり、パッケージデザインなどを、NPO法人環境デザイン・エキスパーツ・ネットワーク、大阪産業大学が担当。「竹姫納豆」と名付けられ、2011年5月に発売された。
「竹筒に入れて天然発酵させると、竹の水分が納豆と絡み合い、糸引きがとてもよくなりました。それに、賞味期限も従来の商品と比べて長くなってます」と、吉田さん。「大東市のこと、それに大阪で作る納豆のことを、より多くの人に知っていただくきっかけになれるよう、力を注いでいます」
地元に根付きながら、新しい味を創り発信しようとする生産者が、ここにも・・・。大阪の食の奥深さを実感するのだった。
[取材日:2011年12月22日]




なにわら納豆
- 小金屋食品・納豆庵こがね屋
- 大阪府大東市御領3丁目10-8 TEL.072-871-8456 FAX.072-871-8884
E-mail:info@koganeya.biz
http://koganeya.biz - 取材協力
- 東果大阪株式会社 / http://www.toka-osaka.co.jp/
- 参照
- ・竹姫納豆に関しては、以下のHPもご参照ください。
http://www.npo-eden.jp/takehime/
[ 掲載日:2012年1月5日 ]