秋の無農薬野菜(コウサイタイ、赤チコリ、オータムポエム、黒キャベツ)

大阪府の最北端、豊能郡能勢町で自然農法によって野菜を作る原尻農園を訪ねた。
紅葉はまだ見られなかったけれど、山間の高地は、さすがに空気が爽やかだった。
原尻農園とはいえ、原尻栄造さんと五百子(いよこ)さんの夫婦で営む。しかも、農業を始めたのは15年ほど前。夫の栄造さんは「5年前に定年退職するまでは警察官として勤務しながらでしたから、ほとんど趣味の世界だったのです」という。
野菜作りに取り組むようになったきっかけは、妻の五百子さんの発奮。「無農薬で栽培された野菜が食べたいと思い、自分たちで作ることにしたんです」。当初は、専業主婦が家で励む畑仕事を夫が公務の休みに手伝うというものだった。
それが、今では、計50アールの畑で年間約100種類を越える野菜を作るまでになった。大阪市内のレストランをはじめ、原尻農園の野菜でないと、といって贔屓にしてくれる購買店は多くある。なかには定期的に足を運ぶ料理人もいる。
「農業は初めてでしたが、やる気をもって探せば、まわりに条件がそろっていたのです」と栄造さん。農村だから、休耕田も多く、畑になる土地はいくらでもあった。
「それらを掘り起こし、発酵させたりして、土壌の改良から始めました」。
そして、お手本の存在。有機栽培する近所の農家に、MOA自然農法文化事業団を教えられた。「農薬や化学肥料を使わず、独学であれこれと栽培方法を試していましたので、MOAに習い、体系的な自然農法を身につけることができたのです」。
現在は、MOAの自然農法を実践する周辺の農家17世帯20名(原尻夫妻を含む)で「土を愛する会」を結成。今年度は栄造さんが会長になり、互いに切磋琢磨する。原尻農園では、栄造さんが栽培に専念、五百子さんが収穫と販売を受け持つという塩梅に、役割を分担した仕事ぶりが板についている。
「自分で興味をもったものしか作っていないので、一般受けする野菜は少ないかもしれません」というのを聞きながら、点在する畑を順に案内してもらう。雑草は夏に短く刈られており、想像していたよりも目立たない生え具合だった。
「コウサイタイという菜は、中国野菜の一種です。花のつぼみが食用で、油炒めや煮物にあいます」などと、これから収穫できる野菜を示してもらう。この時期は葉もの類が多い。西洋菜花のオータムポエムもコウサイタイと似て、花を摘むという。
イタリアンではサラダなどでおなじみの赤チコリ、その横に、黒キャベツという見慣れない野菜が並ぶ。キャベツ系は白菜よりも寒さに強く、冬の野菜としておすすめとか。「うちで作る野菜は、全体に甘いとよく言われます」と栄造さん。
その他、ワサビと同じ辛味のするワサビ菜、皮は赤く実は白くて輪切りにすれば蒲鉾のように見える赤長ダイコン、などと続く。
チシャに似たエンダイブ、白菜の仲間のタケノコ白菜や赤カラシ白菜などは、見慣れたチシャや白菜とほとんど見分けがつかない。
こうした、普段は目にしたことのないのも含め、一度の説明ではとても覚えきれない種類の野菜が、すべて無農薬で育てられているのだ。原尻農園では、1年を通して何かしらの収穫があるという。「足を運んでくれる料理人さんは、畑で見てから その日の献立を考えると言ってましたね」。
自然農法、有機農法、それぞれの定義は、農水省、JAS、関係団体など定義する者・組織によって微妙に異なる。一般に流通している「有機野菜」の表現に対し、野菜は有機物である故、意味をなさないとの言説もあったりする。
わかったつもりでいては決してよくないと実感したが、確かなことは、無農薬で作られているから、生で食べても大丈夫という事実。安心できる食材を求めるならば、原尻夫妻のような信頼できる生産者を探すくらいの努力が必要なのかもしれない。
[取材日:2011年10月28日]






秋の無農薬野菜
- 取材協力
- 兵庫県芦屋市で自然農法・有機農法の無農薬野菜を販売する「CA(シーエー)」
http://www.ovca.jp/ - MOA自然農法については、以下のHPを参照ください。
- 一般社団法人「MOA自然農法文化事業団」
http://www.moaagri.or.jp
[ 掲載日:2011年11月11日 ]