マコモタケ

生産者:西矢 武司さん
大阪府南河内郡千早赤阪村

中国料理でよく使われる食材のひとつに茭白(ジャオパイ)という野菜がある。日本ではマコモタケと呼ばれ、見た目も食感もタケノコに似ているが、味はほんのり甘く、淡い。そのためか、相性のよい食材も多く、いろんな料理にあうようだ。

国内消費は、長らく中国や台湾からの輸入に頼っていたけれど、近年は日本でも栽培に力を入れており、国産のマコモタケを使う料理店が増えつつある。

旬は10月と聞き、生産農家を訪ねた。場所は、大阪の千早赤阪村。関西ではマコモタケを栽培する農家はまだ少数派。生産者の西矢武司さんは、パイオニアとして、栽培のみならず、流通先の開拓など普及活動にも取り組んでいる。

畑に案内されて、まず実感したのは、タケノコ的なイメージが覆されたこと。水田に、丈2mほどの笹に似た葉が繁るばかり。実のような形あるものが見えないのだ。

「マコモタケ(真菰茸)は、マコモ(真菰)という水生植物の茎にできる食用の部分を指します。マコモはイネ科なので、水田を利用して栽培します」と西矢さん。

「株を植えたのが5月上旬。それが、これだけ葉が伸びるんです。でも、収穫するのは、茎のこの部分(と、根元を指す)。ふっくら膨らんできたら、穫り頃です。これから、気温がぐっと低くなると、一気に太るんですよ」

刈り取った茎の皮を剥ぐと、中は乳白色に肥大している。それが、マコモタケだ。太くなる原因は、黒穂菌で、タケ(茸)とついた所以でもある。しかし、菌に寄生され(冒され)た部位を食用にするなんて、人間と植物のなんとも不思議な関係。

「稲を作る田んぼを活用できるから、栽培を始めたんですが、今年で7年目。千早赤阪村のように寒暖差の大きい山間の地が、育てるのには向いているんでしょう。ようやく、おいしいと言ってもらえるのが出荷できています」

いまでは、イタリアン、フレンチや料亭など、中国料理以外の料理店との取引も増えているとか。普通の野菜のように流通経路がまだ確立していないので、直取引のほかは、近所の農産物直売所に出荷している。

「この数年で、全国各地で生産されるようになりました。なかには、皮を剥いで、まさに水煮タケノコみたいにして販売されているのもありますが、うちは、皮をつけたままで出荷しています。そのほうが、鮮度を保てるからです。そのまま冷蔵庫に入れてもらえれば、1週間はもちますよ」と、西矢さん。

おいしい食べ方は、と問えば。「とくに油とあうのか、炒めもの、天ぷらなどがいい味になります。もとは淡白なので、生でも、どんな料理にもいけますよ。料理人さんには、使いごたえのある食材といえるのではないでしょうか」という答え。

「それに、収穫期に必ず、近所の奥さんたちが分けてほしいと来るんです。理由を訊けば、お通じにいいとか。生で2mmくらいの短冊にして食すそうです」

日本のマコモタケ作りは、まだ始まったばかり。課題は多い。西矢さんも「まず、農薬が特定されていないので、無農薬栽培です。うちでは、株を植えてから、アヒルを放し飼いしてます。アヒルが動きまわるだけでも雑草は生えません」と話す。

除草だけではない。収穫したあとの葉の始末もたいそうだ。なにしろ、丈は2mを越える。ほしいのは、根元のわずかな部分。「マコモの葉は、古来より、ちまき(粽)にも使われていたらしいのですが、今のところ使い道が見つかりません。マコモ刈りは体力が必要ですし、残った株の処理もひと苦労」という。

そうした話をしつつも、西矢さんは、マコモタケ作りに手応えを感じている様子がうかがえる。日本の、いや、大阪のマコモタケが広く知られていくのを願うばかり。

[取材日:2011年9月29日]

金剛山に続く高台の地にあるマコモの畑。隣の水田の稲穂と比べても、葉の丈高い様子がわかる。
育ったマコモの横に立つ西矢さん。本来は、生花の栽培を主とした農家だけに、長い葉の扱いは慣れたもの。
根元、水面の上に出ている茎が太るという。取材した日は、収穫には少し早く、見た目ではわからなかった。
マコモ畑で放し飼いにされたアヒル。株を植えてから5ヶ月以上が経ち、アヒルも大きく育っている。

マコモタ

取材協力
東果大阪株式会社 / http://www.toka-osaka.co.jp/
西矢さんのマコモタケは、以下の「一品一会」で購入できる
http://item.rakuten.co.jp/1pin1e/c/0000000221/
*ご利用される場合は、直接お取引ください。

[ 掲載日:2011年10月7日 ]