月ヶ瀬茶(つきがせちゃ)

日本茶は、全国で8万6千トン生産されている。都道府県別占有率では、静岡県(42%)、鹿児島県(27%)が群を抜く。3位が三重県(8%)。次いで、4位グループともいえる宮崎県(4%)・京都府(3%)・福岡県(3%)・奈良県(2%)が続き、その他まとめて11%となる(平成21年度の農林水産省統計)。
今やほぼ全国で栽培・製造されており、輸入に頼ることもなく、高い自給率を保つ。各地域の茶には、代表銘柄ともいうべき呼称がついている。例えば、上記の上位にある関西では、京都なら“宇治茶”、奈良なら“大和茶”というように。
その大和茶の生産地のひとつ、奈良市月ヶ瀬を訪ねた。奈良市街から若草山の奥へ車で約40分ほど走れば、大和高原と呼ばれる高地の山間に入る。月ヶ瀬は、三重県と京都府に接する、奈良県の北東部に位置。空気は爽やかだし、陽射しも柔らかい。
月ヶ瀬地区で、茶づくりに従事する者が集まり、農事組合法人グリーンウェーブ月ヶ瀬が結成されたのは平成6年。17年目となる今年、組合員は21名。なかでも主婦で編成された女性部を代表して、中奥はつさんに話をうかがった。
「月ヶ瀬は、高地にあり、朝夕の温度差が大きいなど冷涼な気候風土が茶の栽培に適しています。古くから茶の生産地となり、ここで作られるお茶は“月ヶ瀬茶”の名で知られてきました。組合員のなかには何百年も続く農家もあります。私たちも代々引き継いできた茶の木を大切に育ててきました」。
そうした農家が集まり、共同で、製茶工場を設け、茶の生産・加工・販売を行なうために設立されたのが、グリーンウェーブ月ヶ瀬という。共同であるのが、農事組合法人である所以とか(詳しくは下記アドレスのHPを参照)。
日本茶(緑茶)は、摘み取った茶の生葉を蒸すなど加熱処理して発酵をおさえ、茶葉を加工製造したもの。湯や水で成分を抽出して飲用に供する。製茶の工程では、香りや渋味などの特徴を引き出すために、葉を揉む、捻るという技が生かされる。
その後に乾燥させ、不要なものを取り除いたりして茶葉を整えると、生葉の約5分の1になっている。以上で一応の製茶は終わるのだが、この段階の茶葉を“荒茶(あらちゃ)”と呼ぶ。先に挙げた全国の生産量も、正確にいえば荒茶の生産量である。 荒茶を炒ったもの(ほうじたもの)が、ほうじ茶になるなど、荒茶にさらに手を加えることで様々な種類のお茶(各製品)が生まれる。
グリーンウェーブ月ヶ瀬の製茶工場は、荒茶にするまでの工程をすべて機械で自動に行なう。1日に約6トンの生産能力があり、設立当時は、関西でも屈指の規模だったという。「この組合では、月ヶ瀬地区の約3分の1を生産しています。大和茶の荒茶生産が年間2千5百トンですから、その約10%に匹敵します」と、中奥さん。
「組合で作るのは、日常的に普段から飲んでもらえるお茶です。共同で生産することで、人手や手間のコスト削減につながり、同じ性質のお茶がリーズナブルに、大量生産できるのです」と、農事組合法人のメリットを強調する。
また、月ヶ瀬茶の特徴は、栽培方法にもある。「栽培する茶の約80%が、かぶせ茶なんです」と、中奥さん。かぶせ茶とは、茶の葉に日光が当たらないよう、覆いをかぶせて育てたものを指す。
「ひと畝ずつ、手で覆いをかぶせていくので、手間がかかります。けれど、日に当てないことで、茶の葉に葉緑素が増し、茶のうま味のもと、テアニンが他の茶よりも多く含まれるのです」。
月ヶ瀬のかぶせ茶は、約10日のかぶせ、とか。その2倍、20日以上かぶせて(日光を当てずに)育てるのが、玉露。それだけ手間がかかっているということなのだ。
さらに、中奥さんに興味深い話をうかがう。かぶせ茶の効果的な味わい方は、水だし、というのだ。「茶の渋味や苦味は、温度が高い湯で抽出するほうが出やすいといわれています。しかし、うま味(もとのテアニン)は、温度の高低とは関係なく抽出できるのです」。だから、かぶせ茶を水でいれれば、渋味や苦味をおさえ、うま味を強めた茶が味わえることになる。
実際に水だしの月ヶ瀬かぶせ茶をいただくと、冷たいから飲みやすい。口中に、うま味と爽快感が広がり、こういう飲み方でも、お茶が味わえるのだと、新鮮だった。
身近で日常的な存在、だったはずの日本茶。製法、品種、適切な味わい方など、実は知らないことがどれだけあるか。各地の銘柄とて、ブランドと呼ばれものがどれほど細分化されいることやら。その世界は、どこか日本酒と似ているなと、実感。
[取材日:2011年9月6日]





月ヶ瀬茶(つきがせちゃ)
- 取材協力
- 東果大阪株式会社 / http://www.toka-osaka.co.jp/
- 農事組合法人については、以下の農水省HPを参照
- http://www.maff.go.jp/j/keiei/sosiki/kyosoka/k_sido/kumiai/index.html
- 農事組合法人グリーンウェーブ月ヶ瀬
- 奈良市月ヶ瀬桃香野4811
http://www.gw-tsukigase.jp/index.html - 月ヶ瀬茶など奈良ブランド品のショールーム
大和月ヶ瀬茶紀行「騎鶴楼(きかくろう)」OPEN - 大阪市中央区南船場3-2-6 大阪農林会館2F
- 月ヶ瀬茶に関する問い合わせ、商品の注文は、ファックスで。
(商品価格表、紹介料理のレシピなどの注文も受け付け) - FAX:0743-92-0352
※ご利用される場合は、グリーンウェーブ月ヶ瀬と直接お取引ください。
[ 掲載日:2011年9月8日 ]