勝間南瓜(こつまなんきん)

生産者:浅田 資道さん・裕見子さん
大阪府大阪市

浅田資道さんと裕見子さんの夫婦で野菜を作る「あさだ農園」は、大阪市東住吉区の長居公園近くにある。周囲で宅地開発が進み、いつの間にかマンションに囲まれた、いわゆる都市の市街地に残る畑だ。

その畑では、なにわの伝統野菜が数種作られていた。玉造黒門越瓜(たまつくりくろもんしろうり)、毛馬胡瓜(けまきゅうり)、田辺大根(たなべだいこん)、天王寺蕪(てんのうじかぶら)、金時人参(きんときにんじん)、勝間南瓜(こつまなんきん)。

近年、大阪市内の農家には、伝統野菜を手がけるところが多くなっているような気がする。これも関係者の努力の賜物。さらに、市場に出回る数がもっと増え、漢字でも間違えずに読めるほど広く知られていくのを願う。

あさだ農園で、8月に収穫期を迎えているのが、勝間南瓜だ。カボチャの仲間であり、渡来して日本にあった品種へと変化した和南瓜のひとつ。カボチャもナンキンも、元は同じもの。使い分けは紛らわしいから、勝間南瓜の表記で通すことにする。

「表面が粉をふいたように成育しているのが食べごろなんです」と裕見子さん。「勝間南瓜は、見た目ごっつい皮ですが、煮炊きすると、とろけるほど柔らかくなるので、高齢者に好評なんです」。

「勝間南瓜は、どちらかといえば甘さはひかえめ。でも、それだけ、味付けしやすく、料理向きの食材といわれています。うちに来られる料理人の方から、スープの他、カレーやシチューにもよく使うと聞いてます」と資道さん。

あさだ農園は、約2アールに多品種少量栽培。それも、流通関係者や料理人のリクエストに応じ、珍しい品種でもトライしてみるそうだ。店や会社から気軽に寄れる距離、市内に立地する農園ならではの話である。

近くにあるだけでなく、浅田夫妻の野菜作りにかける熱意に加え、野菜や栽培に関する知識など情報が豊富なことも、人を引き寄せる要因に挙げられる。もちろん、減農薬、減化学肥料の農業を実施している。

大阪府のエコ農産物生産に認定された、認定農業者であり、裕美子さんは農薬管理指導士の資格も取得。輪作には自家採種を原則とする。

「カボチャは、野菜のなかでも強いほうで、ほとんど農薬いらず。ほっといてもできますよ」と裕美子さん。けれど、3月下旬に種をポットで育て、5月連休中に苗植え、ようやく実りを迎えるまでには、水やりや雑草引きと手間はかかる。

「近所の人は、毎日見てはるから、そろそろ採り頃かなというタイミングもわかってるようで。収穫のときに、わけてくださいと来られるんです」と資道さん。ご近所との関係にも、安心で安全な野菜作りがうかがえられる。

畑には、雑草におおわれた畝がいくつか、放ったらかしのように見えたので、問うと、サツマイモの栽培とか。「そろそろ草引きせねば。毎年10月の収穫期には、近所の幼稚園から園児がイモ掘りに来ますから、それまでは大事に育てないとね」。

こうした浅田夫妻の営む農園が市内にある。大阪の料理人に、新鮮でかつ安心できる食材を求めるなら、一度、あさだ農園をのぞいてみるのをすすめたい。

[取材日:2011年8月2日]

中央の、背の低い畝が勝間南瓜の畝。年間で1.5トンの収穫という。
勝間南瓜の成育を確かめる資道さん。教師との兼業で、日頃の世話は裕美子さん任せとのこと。
裕美子さんが手にするのは、大きく育った米ナス。
勝間南瓜の雌花。花弁の下、茎に大きなふくらみのあるのが実。
小振りな実。青緑の色から成育するにしたがって赤みを帯びる。
成熟すると、皮が赤く(濃い赤茶)なり、粉をふいた状態になる。

勝間南瓜(こつまなんきん)

取材協力
東果大阪株式会社 / http://www.toka-osaka.co.jp/
大阪府なにわの伝統野菜については、以下のHPを参照
http://www.pref.osaka.jp/nosei/naniwanonousanbutu/dentou.html
認定農業者については、以下のHPを参照
http://www.maff.go.jp/j/ninaite/n_nintei/index.html
大阪エコ農産物認証制度(大阪府)については、以下のHPを参照
http://www.pref.osaka.lg.jp/nosei/syokunoanzen/ekonousanbutsu.html
大阪府の農薬管理指導士については、以下のHPを参照
http://www.pref.osaka.jp/annai/saiyo/detail.php?recid=1905

[ 掲載日:2011年8月12日 ]