バジルソース

イタリア料理ではイタリア国旗と同じ配色になるよう、トマト(赤)とモッツァレッラチーズ(白)に並んでバジルの葉(緑)がよく使われる。見た目の彩りだけでなく、バジル特有の香りはイタリアンらしい風味のひとつとして、私たちの舌にしっかりインプットされている。
輸入品に加え近年は国内で栽培されたのも多く出回り、バジルは家庭でも身近な食材になりつつある。例えば、ペスト・ジェノヴェーゼで知られるバジルを使ったオイルソースなど加工品も多くある。しかし、国産品のほとんどが大手メーカー製だ。
そうした市場で評判になっている自家製バジルソースを知り、生産者を訪ねた。訪問先は大阪府藤井寺市。市のある南河内は、もともと都市近郊型の農業つまり果物や野菜など換金作物の栽培が盛んな地域だ。
自家製バジルソースの生産者は大村元昭さん。販売を始めたのは昨年夏という。「それまで、オリーブオイルと他の材料との組み合わせや配合などを数十通りも試し、ようやく納得できるものができました」。原材料は自家栽培のバジルとニンニク、イタリア産オリーブオイル、それに、カシューナッツ、天日塩、コショウ。保存剤などの添加物は入っていない。
大村さんの作物を育てる信条は「子供においしく食べてほしい。それには安心して食べさせられるような作り方をしたいし、珍しいものも作ってみたい」ということ。農薬は減らす方向で、雑草は生えたら手で抜く。米作りとあわせ数種類の野菜を年中同時に育てている。その延長にバジル栽培があり、さらに加工品としてのバジルソース作りへの挑戦があった。
「何かを作りたいと思えば、今や必要な情報はいろんな手段を使って手に入れられる。要は、意欲と納得できるまで何度でも試すこと」。自家製バジルソースは大村さんと妻の成恵さんが丹誠込めて育てたバジルをもとに共同で練った独自のノウハウで作られている。市販の既存商品と比べても大村製は細かく粉砕されたバジルの葉がいっぱい詰まっている。
「プロ向き、家庭向きというのは意識していませんが、どちら側からも購入後の感想では高い評価をいただいています」と大村さん。なかでもベジタブルマイスターに評価してもらったのがうれしいと話す。本腰を入れるためなのだろう、「今年6月ここに移ったんです」という。
訪れたのは、製造所兼住宅。かつて社員寮だった建物だ。1・2階あわせ15部屋あったのを改築しながら有効活用していて、主に1階が製造所。例えば、共同浴場は改装してバジルの洗い場に、食堂は乾燥用にと使い分け。「葉についた水気をしっかり乾燥させなければなりませんからね」というように、乾燥室は洗濯干し場さながらの状態。でも、応接や商談にも使えてなおスペースには余裕がある。
2階は数部屋ぶち抜きで住居にし、大村さん夫婦と幼い子供3人の一家が暮らす。楽しそうでかつリアルな職住一体である。大村さんは農作業の傍らwebシステムデザインの仕事もこなすという。発想は豊かで敢行の人とお見受けした。
実家と代々受け継ぐ水田や畑は近くにある。「もとは水田を畑にしてますから、潅水は十分。逆に少しでも水につかると弱い根菜類には向いてません」と大村さん。露地栽培のバジルは夏が旬。これからは1年を通して商品を供給できるよう、ハウス栽培にも取り組んでいる。こうした栽培の様子は、お得意のwebで公開している(下記アドレス参照)。
試食させてもらうため、ビン詰めの蓋を開ける。ニンニクやオリーブオイルの香りよりは、いっぱいに詰まったバジルの香りが強くフレッシュなおいしさが味わえた。まさに、食べられるソースだ。
大村さんがすすめるように、トーストやチキンローストにもよくあう。ハンバーグに練り込むのもおいしそうだし使い道は多くありそうだ。保存剤が入っていないので賞味期限は3ヶ月というが、新鮮なのを食べ切るのに程よいのではないか。
「販路の拡大はこれからです」と大村さん。ノーブランドの自家製バジルソースがどのように受け入れられていくか、注目したい。
[2010年8月30日取材]






バジルソース
- 取材協力
- 東果大阪株式会社 / http://www.toka-osaka.co.jp/
- 大村さんのバジルHP
- http://basil.sc/
[ 掲載日:2010年9月6日 ]