八尾えだまめ

夏が旬のえだまめをおいしく食べるには、近場の穫れたてを求めるに限る。なぜなら、えだまめは収穫後2日も経てば旨み成分のアミノ酸と糖分が半減してしまうからだ。そこで、関西の近場を探せば、大阪府八尾市で栽培されている「八尾えだまめ」の評価が高いことを知る。
八尾市はもともと野菜作りが盛んで、大阪の食を古くから支えてきた都市近郊にある農産地のひとつ。とくに、菊菜、若ごぼう、いちごなどの特産品が知られている。えだまめの栽培は昭和35年頃から地域をあげて取り組まれていた。市場に近く、鮮度の良い状態で供給できることから、八尾のえだまめはおいしいと評判になり、栽培する農家も増えていったという。
今では八尾市160余りの農家で作られ、全体の年間出荷量は610トン(平成17年度)になる。これは近畿圏でもNo.1とのこと(JA大阪中央会調べ)。近年は大阪産(もん)の認定も受け、地域の特産ブランド・八尾えだまめとして、その名を広めつつあるのだった。
生産者のひとり、結城拓也さんを訪ねると、開口一番。「農家一軒当たりの規模は小さいのですが、逆に丁寧に育てられるのが八尾えだまめの強み。ひとつひとつ実の熟し加減を見極め、まさに食べごろのタイミングで収穫し出荷していますから」。
結城さんの畑ではハウスものと露地ものが並んで育てられていた。2月上旬から始まる種蒔きもずらしたり、栽培方法を変えたりしながら、収穫適期の短いえだまめが順に育つようにし、少しでも長い期間出荷できるよう配慮されているのだ。
「5月下旬からハウスものを収穫。続いて露地ものへと移って、8月まで出荷できます」とのこと。確かに、ハウスでは実がパンパンに張っているが、露地のほうは枝にまだ実の姿も見えない。
「本来の味がどんなに濃いか、味わってみてください」と、穫れたてをいただく。プリっとした実は、噛むとほぐれるような程よいかたさで、口のなかに甘い味が広がる。これまで食べていたえだまめは何だったのかと思うくらいに甘さは強い。
収穫した途端、この糖分が失われていくのをいかに遅らせるかが大事になる。日に当たって呼吸が盛んになりエネルギーの糖分が減じるのをおさえるのもひとつの方法。結城さんは「前の日に目星をつけておき、えだまめが寝ぼけている早朝に収穫。すぐに冷蔵庫へ入れて鮮度を保つようしています」という。
また、出荷に時間をかけないよう、枝から莢を取るための自動機械を導入。枝付きのと莢のと2種類同時に、朝穫りを出荷できるようにしている。
八尾えだまめは近畿圏No.1の生産量とはいえ、関西の市場に行き渡るほどの生産量ではない。地元のほかは、まだ、知る人ぞ知るという存在だ。この夏、旬の食材としてトライしてみる価値はあると思われるのだが...。
[2010年5月31日取材]



八尾えだまめ
- 取材協力
- 東果大阪株式会社 / http://www.toka-osaka.co.jp/
- 結城さんのワンポイント・アドバイス
- ・えだまめは、莢に産毛があるほど新鮮でおいしいとのこと。
・茹でるなら、フライパンなど浅めの鍋で蒸し茹でにするのがおすすめ。
1:えだまめの産毛をとるように水で洗い、塩もみする。
2:フライパンなど浅めの鍋に、えだまめが浸からない程度の水を入れる。
3:蓋をして、強火にかけ、沸騰して2〜3分茹でる(茹ですぎるとアミノ酸が流出しやすくなるので注意)。
4:ザルにとって水を切り、後は、うちわで手早く冷ます(水で冷ますと水っぽくなるので注意)。
[ 掲載日:2010年6月4日 ]