日本で生まれ、日本で育ち
日本で生産したからわかる、
日本人をとりこにする卵。
「能勢おうはんの卵」

生産者:小谷養鶏場 小谷 健造さん
大阪府豊能郡

日本人が「卵」に抱く、世界一の執着と誇り

卵を生で食す世界唯一の人種、日本人。だからこそ、私たちは卵かけご飯の味に最も厳しく、その美味しさを世界一知っているといえるだろう。ならば、その一玉にも世界で一番こだわりたい。そうした想いから辿り着いたのが、大阪・能勢の地で育まれる「能勢おうはんの卵」だ。
手掛けるのは、大正12年から養鶏業を営む小谷養鶏場。100年以上の歴史を重ねた、まさに養鶏のベテランである。

「効率」を捨てて選んだ、わずか1%の希少種

現在、市場に流通している茶色い卵の80~90%は「ボリスブラウン」という海外種だ。少ない餌で効率よく育ち、味も良好。市場の大半を占めるのは当然で、小谷さんも以前は育てていた。
しかし、どれほど工夫を凝らしても味に独自性が出にくいことに不満が募り、ついに「鶏自体を変える」という大胆な決断を下す。何度も飼育実験を繰り返し、2020年には日本発祥の地鶏「岡崎おうはん」への変更に着手。能勢で育てることから「能勢おうはんの卵」と命名した。
「岡崎おうはん」を扱う養鶏場は全国でも数軒のみ。卵の流通量はわずか1~2%に過ぎない希少なものだ。話題性は高いが、現実は簡単ではない。「特徴のある養鶏場になると思ったのですが、消費者にはなかなか違いが伝わらないですね」と小谷さんは苦笑する。
国内生産なら品種を問わず「国産卵」といえるが、「“純”国産卵」を名乗れるのは地鶏が生んだものだけ。しかし、その一文字の有無だけでは、想いも魅力もわかってもらえない。食べれば個性の差は明らかなのだが、興味を持ってもらうまでの距離が縮まらないもどかしさが課題だ。

美味しさの秘訣は、うどん屋から届く「鰹節」

さて、気になる能勢おうはんの実力とは?まず挙げられるのが、豊かな旨味とわずかに感じる塩味だ。秘訣は、独自成分を配合した飼料にある。中でも目を引くのが「鰹節」だろう。出汁を取った後のガラをうどん屋から取り寄せ、発酵させて使うのだ。
「昔は餌に魚粉を混ぜていて、それが日本の卵独特の風味を出していました。魚が高い現代では使われませんが、代わりに入れてみたところ、わずかな塩味が生まれたのです」
ほかにも、味をまろやかにする白米や、コクを引き立てる木酢などもブレンドする。「成分をひとつ加えるたびに味が変化します。今も常にデータを蓄積しています」と小谷さんは明かしてくれた。

生産者は人ではなく鶏自身

小谷さんは、「僕は生産者ではありません」と言い切る。
「生産者は鶏たち。我々は鶏が健康に育つよう全力を注ぐだけです」
だからこそ毎朝鶏舎に入り、鶏冠の色や形、鳴き方のわずかな違和感も見逃さない。ストレス配慮も徹底している。ケージ1つの定員は7羽だが、実際に入れるのは4羽まで。ケージの構造上、一度に餌を食べられるのが4羽だけだからだ。「空腹時に食べられず待たされるような状態が続くと、いずれ弱ったり、痩せたりしてきますから」と配慮を忘れない。
能勢の環境も味方する。暑さに弱い「岡崎おうはん」にとって、市内より気温が低い山中の気候は理想的だ。大きな道路がなく、夜間に車のライトが入らず熟睡できるのも、この地域ならではの恩恵といえる。

未知を楽しむ心と、次なる夢

「岡崎おうはん」はデータが乏しく、品種改良も進んでいないため飼育は繊細で不安定だ。当初は手探りだったが、小谷さんは「何をしたらどんな結果になるのか探るのは、ワクワクしましたね」と振り返る。
今では生育技術も確立し、その視線はさらに未来を見据える。次の目標は、卵に加え地鶏肉も手掛けることだ。旨味にはプロの料理人も太鼓判を押すが、飼育期間の長さによるコスト高や強い歯ごたえなど、万人受けへのハードルはまだまだあるとか。それでも「狙う市場が合えば、きっとわかってもらえる」と、その表情には揺るぎない自信が満ちていた。
卵にしても肉にしても––「純国産」ならではの“口福”に食卓が気づく日は、そう遠くないはずだ。

[取材日:2026年1月30日]

一番美味しい食べ方は王道の卵かけご飯
おすすめの食べ方は、もちろん卵かけごはん。白身は思い切って捨てるのがコツだとか。醤油も1滴か2滴ぐらいで十分。ただし若干塩味が強い薄口醤油は、もともと塩味がある能勢おうはんとは相性が悪いのでご注意を。塩分濃度計で測っても検出されないほど繊細なものだが、醤油ひとつでバランスがガラッと変わってしまうのが面白く、奥深い。
確かな生産者が生む、確かな品質
「生産者は鶏」と言い切る小谷さん。パッケージにも「生産者」とはっきり明記されている。当然、品質は折り紙付き。濃厚な旨みの黄身は、つまめるほどしっかりしている。
飼料に鰹節ガラを配合
本来なら捨てられるはずの出汁を取った後の鰹節ガラを飼料に配合。良質な卵へのこだわりが、いつの間にか循環型社会へとつながっているのも小谷養鶏場の特徴だ。
道の駅から名門ホテルまで。食のプロが認める逸品
流通先は地元の道の駅「くりの郷」や京阪百貨店、箕面の農産物直売所などのほか、大阪を代表するホテルのレストラン、地元のスイーツ店、料理店とも直接取り引きがある。プロも認める品質の証だ。
鶏舎はストレスフリーを徹底
餌の順番を待つことがないように、1つのケージで飼育するのは4羽まで。夏には屋根に散水するなど、鶏舎の過ごしやすさに注力していることがわかる。
循環型農業にも貢献
鶏糞は、2年間熟成させることで無臭に近い堆肥に再生。使いやすい状態へ加工することで農家の需要に応えるとともに、廃棄物を有用な資源へと生まれ変わらせる。

日本で生まれ、日本で育ち日本で生産したからわかる、日本人をとりこにする卵。「能勢おうはんの卵」

取材協力
小谷養鶏場
大阪府豊能郡豊能町山辺256
tel:072-734-0473 fax:072-734-2997
mail:egg072734@gmail.com
web:https://kotaniyokei.com/
事業内容:養鶏および鶏卵の生産、販売。

[ 掲載日:2026年3月23日 ]