大阪府でただ一人。
オンリーワンの農家が育てる大阪自然薯。
「大阪自然薯 土の輝き」
大阪で唯一の自然薯農家
大阪にも色々な作物を育てている農家があるが、ただ一人しか栽培していない野菜があることをご存じだろうか。それが、大阪自然薯。大阪府下で大規模に栽培しているのは、熊取町に畑を開く岩崎さんだけだ。
山芋であることはわかるが、どのような特徴があるのだろうか。
岩崎さんの畑を訪ねた。
「山芋といえば、皆さん長芋や伊勢芋、つくね芋などをイメージすると思います。これらは中国由来ですが、自然薯だけは日本に古来から自生しています。ほかと比べて風味が豊かで栄養価も高く、粘りが強いのです」と岩崎さん。
古くから日本に自生していながらほかの人がつくらないのは?
「売るのが難しいからでしょうね。栽培も簡単なように見えて微妙に難しい。商品として出せるのは、例年全体の3割くらい。これならいいと思うものが出来るまで3年かかりました」と苦労を振り返る。
それでも続けるのは、誰も作っていないからこそ一番になれると思ったからだという。
水の管理が上質な自然薯につながる
自然薯の栽培は、土中に埋めたパイプの中で育てる「パイプ農法」と、波板の溝に種芋を設置して土に埋める「波板農法」がある。岩崎さんは後者だ。
「波板農法は芋の上に多くの土を乗せるため、圧力が適度なストレスになって強い粘りが出るんです」と理由を教えてくれた。
ただし、水の管理がとてもシビアだ。芋が水に長時間触れると腐ってしまうため、土の上にはマルチをかぶせてしっかり防水しなければならない。一方で、根は水をたっぷり吸える環境が必要だ。
化学肥料を使わない安心栽培
土づくりにもこだわる。自然薯は水はけが良く乾いた土壌を好むため、大量のもみ殻を入れるのが岩崎さん流。肥料は、カニガラを使うのが特徴だ。実は自然薯には、苦土石灰(カルシウムにマグネシウムを加えたもの)が使えない。一般的に、ジャガイモ以外の野菜を作る時は、初めに苦土石灰を入れる。雨などで酸性に傾いた土地を中性に戻しながら、カルシウムとマグネシウムを補充するためだ。だが、もともと日本に自生している自然薯には酸性の土壌が適している。そこで、カニガラによって不足するミネラル分を補充するのだ。
また、根に傷をつける線虫への対策でもあるという。カニガラに含まれるキチン質は、線虫を抑制してくれる微生物「放線菌」の増殖に役立つという。肥料と害虫駆除の一石二鳥の働きをしてくれるのだ。
農業を通じて、さまざまな活動を展開
魅力的な大阪自然薯だが、もしも岩崎さんが引退したら大阪の生産者がいなくなってしまう。心配しているファンもいることだろう。
「『くまとり新規就農塾』という会を立ち上げて、家庭菜園からプロを目指す人まで授業をしています。信用がついたら畑も貸しますし、実績ができたら役場へ就農の手続きまでサポートするんです。そういう人達が多分受け継いでくれると思います」。
ほかにも「くまとりこども農業学校」という、植え付けや収穫を体験し、最後に畑で遊ぶというイベントもしているとか。
農作業以外にも幅広く活動していることに感心してしまう。今後はどのような展望を描いているのだろうか。
「ゆくゆくは熊取の特産品、そして大阪の伝統野菜を目指したいですね。ほかにも、まだ企画段階ですが『栗の木プロジェクト』という構想を練っています。栗は年々収量が下がり、壊滅状態になりつつあります。そこで休耕地に栗をたくさん植えるんです。栗は利益が高いわりに、作業が少ない。ケーキ屋からの需要も絶えません。大きなチャンスを秘めています。農家が儲かるビジネスモデルを作ることで、地域と農業を盛り上げるのが夢です」。
自然薯とともに地域の活性化まで視野に入れている岩崎さん。自然薯譲りの粘り強さで、いつの日か実現してくれることだろう。
[取材日:2024年10月7日]
大阪府でただ一人。オンリーワンの農家が育てる大阪自然薯。「大阪自然薯 土の輝き」
- 取材協力
- くまとりこもれび菜園
- 大阪府泉南郡熊取町五月ヶ丘2-19-17
- tel:072-453-2029 fax:072-453-2029
- mail:nikoniko@oosakajinenjo.com
- web:https://www.osakajinenjo.com/
- 事業内容:大阪自然薯などの栽培および販売。
[ 掲載日:2024年11月20日 ]