ミルクそのままのおいしさを、
できたてモッツァレラで楽しむ幸せ。
「モッツァレラチーズ」

生産者:
株式会社ミルクファームすぎやま 取締役 杉山 牧さん
京都府船井郡京丹波町

高校時代からずっと乳加工に専念。

京都でも屈指の酪農地域、京丹波にモッツァレラチーズ専門工房「ミルクファームすぎやま」がある。京都でモッツァレラ専門。なかなか珍しい組み合わせだが、話を聞いて納得した。まさにこの場所、このチーズでなければならない理由があるのだ。

杉山さんは家が酪農家だったこともあり、高校では食品加工を専攻。乳製品開発や乳酸菌について学んだ。卒業後は、さらに知識を深めるために酪農王国である北海道へ。8年に渡って、本場の盛んなチーズづくりを肌で学んだ。
「難しさや面白さを目の当たりにし、微生物がつくるチーズの奥深さに、ますます魅せられました」と当時を振り返る。
酪農家が自ら搾った牛乳でチーズ加工をしている様子を見みる程に、自分も挑戦したいという思いを抑えられず、ついに実家の牧場に隣接したチーズ工房を設立したのだ。

できたての魅力を伝えるため、モッツァレラに特化。

チーズに特化した工房は珍しくないが、モッツァレラ専門となると、なかなか目にすることはない。一体どうして?
視察のために訪れた南イタリアでモッツァレラを食べた時、牛乳そのままの旨みが前面に感じられる豊かな風味と鮮度に驚いたそうだ。
「こんなチーズがつくりたい!」。京都へ帰れば搾りたての牛乳が使える。環境も整っている。
「できたてだけが一番とは言いませんが、モッツァレラチーズは、できたてのおいしさを最も感じることができます」。杉山さんの口調にも熱がこもる。
モッツァレラ専門にこだわるのは、こうした気持ちがあるからだ。
できるだけできたてを届けるため、卸すのは周辺の道の駅や京都市内のイタリアンレストラン、ピザ店がメイン。食材にこだわるスーパーからの需要も高い。

厳選した素材だけで、丁寧に、シンプルに心を込めて。

チーズは朝に搾ったばかりの牛乳で手づくりし、封入からラベル貼りまで一人で手作業。「ミルクそのままのおいしさを活かしたい」。ひたむきな思いは、そのまま優れた味わいに結実している。
乳化剤や安定剤などの添加物は一切不使用。素材は牛乳と食塩のみだ。
塩については、フランスの岩塩なども色々試したそうが明石地方の塩に落ち着いた。
「日本で採れる牛乳なので、馴染みのある国産の食材を選びました。ミルクの旨味をまとめてくれるように感じています」。
なるほど、チーズといればヨーロッパのイメージだったが、言われてみればその通りだ。

また、「おつまみモッツァレラ」シリーズには、京丹波町で生産された乾燥バジルなど、価値と伝統を重視したスパイスを厳選。まろやかなチーズと調和する上品なアクセントに、ついついお酒も進む。

安定した乳質をめざして、牛の健康を徹底管理。

四季によって、夏は脂肪分が下がるなど乳質が変化する。また、季節の代わり目は牛も体調を崩しやすい。そこで、なるべく牛乳の質が安定するように牧場の方でも管理を徹底する。例えば、牛の首に個体管理システムを装着。食べた餌の量、搾った牛乳の量などをデータ化して把握している。
搾乳は24時間、ロボットが搾る「ロボット搾乳」を導入。搾って欲しいタイミングは牛それぞれ。24時間稼働するロボットなら、一番良いタイミングで搾乳を行える。乳が張ってくると痛みが出るため、ストレスを軽減するための工夫だ。
また、杉山さんは、なるべく毎日チーズを製造するが、鮮度へのこだわり以外にも意味がある。データに現れない、牛の微妙なコンディションの違いを見落とさないためだ。
餌にも気を使い、飼料米は牛糞を堆肥にした自家栽培。酒粕など食物繊維も配合することで腸内環境を整え、健康維持に心を配る。

イタリアンの枠を超えて美味しさを届けたい。

現在の販売先はイタリア料理店がほとんどだが、せっかくの京都生まれのモッツァレラだ。今後は和食店にも利用シーンが広がれば、また新しい食文化が生まれるのではないかと未来へ期待と想いを馳せる。

[取材日:2022年12月7日]

毎日約140個のモッツァレラを手作り。
搾りたての牛乳は殺菌や発酵の工程を経て、モッツァレラチーズの原料となる「カード」と呼ばれる生地がつくられる。1リットルの牛乳から製造できるチーズは、わずか約100グラム。牛乳の栄養素が凝縮しているため、少しの量でもしっかり栄養が摂れるのも魅力。
カードを塩の入ったお湯で練り、丸く形を整えればモッツァレラチーズが完成!発酵の温度やカードの水分量を繊細に調整することで、モチモチしながらも歯切れの良い絶妙な食感が生まれる。
お醤油にも合うから、気軽に味わえる。
オリーブオイルやバルサミコ酢、岩塩でもおいしいが、杉山さんのモッツァレラはお醤油と相性が抜群だ。飼料の中に大豆や米などを配合しているため、自然と日本の調味料に合うのかもしれない。イタリアのモッツァレラとは、また違う楽しみ方ができる。
一番の品ぞろえを誇る道の駅「味夢の里」。
味夢の里へは自ら納品に出かける。商品を並べていると、「ここのモッツァレラおいしいよね」と、直接声をかけられることも。一番嬉しい瞬間だ。
牛の健康状態はデータで一目瞭然。
首についている装置が牛の状態をパソコンに送信。100頭以上いる牛を識別し、それぞれの状態をチェックする。牛乳の安定した品質を支える要だ。
牛舎の一角に「ロボット搾乳機」を設置。
装置の中に牛が入ると自動で搾乳がはじまる。ここで搾乳できることを牛に何度か教えると、後は自ら来るようになるそうだ。頭の良さに感心してしまう。

ミルクそのままのおいしさを、できたてモッツァレラで楽しむ幸せ。「モッツァレラチーズ」

取材協力
株式会社ミルクファームすぎやま
〒622-0201 京都府船井郡京丹波町下山中野51-2
tel:0771-83-0282 fax:0771-83-0896
mail:info@milkfarmsugiyama.com
facebook:https://www.facebook.com/profile.php?id=100064902545552
京丹波セレクション(ネット通販):https://kyoselection.thebase.in/
事業内容:モッツァレラチーズの製造・販売および酪農。
※牧場での直売は行っていません。

[ 掲載日:2023年1月20日 ]