“毎日が旬”の環境で育む
工場品質の美味と安心。
「屋内型水耕栽培野菜」

生産者:株式会社大剛 伏見工場 大垣 恵さん
京都府京都市

食の安心安全を追求した、完全閉鎖型水耕栽培。

野菜の栽培風景と聞いて連想するのは、大地と太陽だろうか。ところが京都にある株式会社大剛は、少し様子が違ってくる。野菜を育てるのは密閉した室内。土を使わずLEDの光と水で育てる完全閉鎖型水耕栽培。一言でいうと「野菜工場」だ。
工場というと完全オートメーションをイメージするかもしれないが、ここでは種まきや収穫、検品、梱包は手作業で行う。だからこそ、良い苗を選別して植えることができ、生育度合いをチェックしながら栽培方法を調整できる利点もある。機械の正確さと、繊細な人の手がより品質を高めるのだ。

室内だからできる「毎日が旬」の好環境。

野菜にはもっとも美味しく育つ旬の季節があるが、最適な環境が整った工場なら毎日が旬になる。年中栽培でき、基本的には定植してから収穫までは約30日。当然、不作に陥ることもない。天候不良で市場に葉物野菜が出回らない時でも、安定して出荷することができる。もちろん価格も通年ほぼ一定だ。
日照や気温、雨風などに影響されない室内栽培だが、だからこそ環境の管理には気を遣う。特に肥料設計と濃度は野菜の品質を左右するカギだ。
「肥料は何度も数値を確認しながら、最適な濃度を見極めています。水耕栽培と一言にいっても、環境によって最適な肥料設計はそれぞれです」。
大剛の野菜はシャキシャキした歯ごたえと苦みの少ない風味に定評があるが、まさしく細やかなチェックの賜物だ。

クリーンな室内でつくるクリーンな野菜。

衛生的であることも、室内栽培ならではの利点のひとつ。工場内へ入場するスタッフはエアシャワーが必須。外気も高性能なフィルターを通して取り入れるため害虫やホコリ、細菌などの異物侵入も抑制する。虫がつかないのだから、当然農薬は使わない。
また露地栽培なら梅雨時期は雨で泥が跳ね、土に含まれる細菌が根元を腐らせる恐れもあるが水耕栽培なら心配無用だ。
「洗わずにそのまま食べられますよ」という一言が、細菌レベルの低さを保証するかのようだ。
嬉しいのは安全面のみではない。洗わなくても良いということは、台所に長時間立つ負担も軽減できる。特に水が冷たい冬場は助かるだろう。飲食店なら仕込み時間短縮、労働コストの削減にもつながるため、その価値は計り知れない。

鮮度を重視して販売方法まで厳選!

安心、安全、おいしさ。そのすべてを支える鮮度へのこだわりにまた驚かされる。
通販の場合は、前日に収穫したものを翌日に届くよう発送する。飲食店ならその日に採ったものを持ってくことも珍しくない。
在庫を計画的に管理できる、小さい工場だからこその強みが光る。
野菜は土を落とすために洗浄するだけでもダメージを受けて鮮度に響くが、“そのまま食べられる野菜”なら問題はない。
「ありのままの状態で食べて欲しいから、収穫から梱包までできるだけ手を加えません」。
文字通り採れたてが味わえるというわけだ。
極めつけは、スーパーには卸さないという販売方針だろう。自らの手で商品を管理できず、どういう形でいつ店頭に並ぶかわからないからだ。
「私たちの野菜は安い方ではありません。だからこそベストの状態でしか販売したくないのです」と、大垣さんは言い切る。
栽培から出荷まで全工程を把握できるネット通販を大事にするのも、そうした想いがあるからだ。店頭への出荷は地元の直売所である「じねんと市場」と「産直ひろば」の2か所のみ。理由は明快。野菜の状態に目が行き届くからだ。鮮度や状態に納得できなければ、ためらうことなく棚から降ろす。
「少しでも傷んでいるものは、ブランドとして出したくないのです」。
行儀は悪いがリーフレタスを袋からそのまま食べてみた。
自然のまま、採れたまま。鮮度こそ何よりのご馳走だと実感したのだった。

[取材日:2022年6月23日]

工場内では約10種の野菜を栽培
通年あったら嬉しい品種にこだわって、主力のリーフレタスをはじめ水菜、ルッコラ、ベビーリーフ、春菊、カブ、ビーツ、ラディッシュ、エディブルフラワーなどを無農薬で育てる。
室内・スタッフとも万全の細菌管理
植物微生物センターの優良証も取得。スタッフの健康状態を調べ、O-157をはじめとする菌やウイルスが基準値以下であることを証明する。リスクを持ち込まない対策も万全だ。
飲食店とのコラボレーションも積極的
左から、エディブルフラワーをあしらったバスクチーズケーキ(スペイン料理エルポジョ)、たっぷりの水菜が爽やかなつけ麺(ラーメンの風来房)、人気のフリルレタスと相性抜群の焼きしゃぶ(焼きそばとハイボール PACK)。
通販の看板商品「野菜のセット」
コロナ禍が始まった2年前の6月から、ネット通販をスタート。野菜を外へ買いに行きたくないユーザーもかなり多く、想像以上の売り上げを記録。人気野菜をセットにして欲しいという要望から生まれた「野菜のセット」が人気を集めた。
月に一度は敷地内で直売会を実施
採れたて野菜と併せて飲食店とのコラボ商品を目玉として並べることも。集客力を上げると同時に、飲食店の宣伝にもなるウィンウィンの関係が魅力だ。地元への周知効果にも期待が高まる。
いつでも新鮮野菜が並ぶ直売所
産直野菜の直売所「じねんと市場(伏見区)」と「産直ひろば(西京区)」の店頭では、販売のほか直売イベントも実施。試食会では1回食べれば美味しさがわかるとあって、賑わいをみせる。

“毎日が旬”の環境で育む工場品質の美味と安心。「屋内型水耕栽培野菜」

取材協力
株式会社大剛 伏見工場
〒612-8496 京都府京都市伏見区久我西出町3-17
tel:075-924-6411 fax:075-924-6412
mail:ogaki@yasuda-group.co.jp
http://www.yasuda-group.co.jp/
事業内容:水耕野菜の栽培および販売。

[ 掲載日:2022年7月21日 ]