絹サヤ(サヤエンドウ)

生産者:田鶴 均さん
京都市上賀茂

賀茂川と高野川に挟まれた上賀茂地区は土壌が肥え、農地に適しているため、古くから米や野菜が作られてきた。この上賀茂で代々続く農家を引き継いだ田鶴均さんは、賀茂ナスなど京の伝統野菜の生産者としても知られる。

江戸時代から自家採取された種を継承する農家の仲間と「京都伝統野菜研究会」を設立し、活動を続けて20数年。契機は「瓢亭」の高橋英一さんとの出会いだった。料理人と生産者が交流するなかで伝統野菜を見直す意識が高まっていったという。

現在は約1haの畑で、1年を通して京の伝統野菜をはじめ多品種の野菜を栽培。日によって採れる品種や量の多い少ないはあるが、毎日採れたての野菜を箱に詰め、契約した料理店やスーパーへ送る。

3月から4月にかけては、いわゆる端境期。仕込みに忙しいものの、収穫できる野菜は数少ない。取材に訪れた日は、春ものの代表、エンドウ豆など豆類が実り始めていた。なかでも「絹サヤ」と呼ばれるサヤエンドウがおすすめ。

なにしろ、江戸時代から代々自家の種が引き継がれてきたのである。田鶴家で栽培と種の採取を繰り返してきた絹サヤは、豆が「ぷりぷりしている」のが特徴だ。エンドウ豆の若採りで、さやごと食べられるのが絹サヤ。見慣れているのは、可憐で実が感じられないほど薄いもの(薄いほど上質とも言わている)。しかし、田鶴家の絹サヤは、豆の形が見てとれ、見た目にも違いがわかる。

「もちろん、さやごと食べてもらえるのですが、豆のぷりっとした食感があって、まさに豆を食べているのと同じ」と田鶴さん。絹サヤは風味がよく、鮮やかな緑の色が料理を引き立て、特に炊き合わせによく使われるのだが、田鶴家のぷりっとした絹サヤは洋食系の料理人からのオーダーが多いという。見た目の違いは、料理人の選択にも微妙な影響をもたらしているようだ。

近年は、さやごと食べられるスナップエンドウ(スナックエンドウ)も栽培。同じエンドウ豆でも、実(グリーンピース)、さや(本来の絹サヤ)、さやと実、食べられるところの違いで品種は様々。料理にも幅広く使われている。「採るのが早すぎると水っぽいし、収穫した後は水分が出てしまうので、鮮度が命」と、田鶴さんは採るタイミングをはかる。「とくにグリーンピースは、使う直前にさやから取り出してもらうのが良い」という。また、続いてインゲン豆も収穫の時期を迎える。田鶴さんはこのインゲン豆は「湯がくだけでも、ホンとうまいですよ」とすすめる。

[2009年4月19日取材]

見た目にもさやの中に並ぶ豆の形がわかる。田鶴家に継承されてきた絹サヤで、こちらはサヤごと食べられる。
さやに白い粉をふいた頃が収穫時期。こちらは、実の豆(グリーンピース)を食べるほうのエンドウ。
上賀茂に代々続く田鶴家の畑。収穫を迎えるものがあれば、畑を耕しこれから種をまくものある。

絹サヤ(サヤエンドウ)

・カロテン、ビタミンCが豊富でビタミンBなども多い。食物繊維も豊富に含まれている。
・ほんのり甘い風味、歯ざわりと緑の鮮やかさが魅力的。煮物、ちらし寿司などに欠かせない食材。
火の通りが早いので、ガス火を調整しさっと加熱して鮮やかな色を生かしたい。
ビタミンCの損失も防げる。

[ 掲載日:2009年6月5日 ]