ワンダフルソース

生産者:ハリマ食品株式会社 鎮西ちんぜい 裕幸さん
兵庫県尼崎市

尼崎の住宅街に突如現れる「ハリマ食品」の建屋。ソースの甘酸っぱい香りに導かれるまま工場に入れば、ソース造り真っただ中の代表・鎮西裕幸さんが出迎えてくれた。湯気が立ち籠る場内には、使い込まれた木樽が鎮座。直径2mはあろうか、その大きさとマニュファクチャーな空気感にしばし圧倒されていると、「この工場自体が、骨董やろ?」と鎮西さんは微笑む。

昭和39年(1964年)創業。2代目の鎮西さんは現在、ソース・醤油・ポン酢など約10種の調味料を、奥様・マサ子様と二人三脚で製造する。なかでも「ワンダフルソース」はウスターソースと、とんかつソースの2種。尼崎市内の学校給食はじめ、阪神甲子園球場の焼きそばにも使われており、尼っ子には幼い頃から馴染みがあるソースだ。とは言うものの、スーパーや小売店などでの一般販売はしていない。「社員食堂や給食、街のお好み焼き屋をはじめとする飲食店へ直接、出荷しています」。それには確固たる理由があった。取引先それぞれの要望を聞き入れ、オリジナルのソースを提供するのだ。先の2種のソースを主体に、どろソースほか計4種のソースで甘味や辛味のバランスを調合。しかも、保存料や添加物を使っていないから、一般的な商品と比べて賞味期限が短く、小売り向きではない。だからこそ、鎮西さんは言う。「ウチのソースは“医者いらず”やと思うんですわ」。

そこには材料やものづくりに対する、あくなき想いがあった。例えば、玉ネギはスライスするところから。「粉末にした野菜を使うメーカーさんも多いですが、ウチでは食材は必ず、フレッシュなものを使います」。まずは野菜類や8種の香辛料などを木樽に入れて95℃で加熱。これが2種のソースのベースとなる。2日目、別の木樽で配合した糖類などを合わせてウスターの元が出来上がる。「この木樽に蒸気で熱を入れて10日間、混ぜ合わせ、自然冷却を繰り返したらウスターの完成です」。一方、とんかつソースはベースとなる材料にザラメなど糖類を加え、でん粉でとろみをつけ約2週間、木樽で同様の加熱と冷却を行う。先代が創業時、小豆島から持ち帰った木樽5樽が毎日フル稼働する。「木製の樽で仕込むと、仕上がりにまろやかな味わいが生まれ、舌にすっと馴染むんですわ」。できたてのとんかつソースをテイスティングさせてもらった。口に含めばスキッとした酸味を感じ、優しくも深みのある甘味と旨味がじんわり広がる。ツンとした尖った印象が全くなく、まぁるい口当たりの余韻が心地よいのだ。「レシピは少しずつ変えています」。例えば、濃厚な味わいのなかにもさっぱりとしたテイストを。また塩分濃度を控え、香辛料や糖蜜のバランスでコクを付けるなど時代に応じた配合を考え続ける。「ソース作りだけは、何年やり続けても難しいんですわ。でも、子供も大人も安心して味わうことができる商品を、残していくのが私の役目やと思ってます」。技術と情熱を持ち、品質の向上を追求する鎮西さん。彼の手により生み出されるワンダフルソースは、次代へ繋ぎたい関西の誇りである。

[取材日:2019年2月20日]

大きな木樽にはしごをかけて仕込みを行う鎮西さん。「毎日体力勝負ですわ」。この日は醤油の仕上げと、ソースの仕込みに追われていた。
ソースづくりに使う木樽は、そのほとんどが50年以上前に小豆島で作られたもの。容量1800ℓ(1升瓶1000本分)のものが5樽あり。
甘辛いどろソースが入る小さな樽。「このソースを、ウスターやとんかつソースにブレンドし、サンドイッチ用ソースはじめ取引先のオリジナルソースを作ります」。
地域の小学生が社会見学に来たり、中学生が職場体験に訪れることも。写真は小学生からのお礼の手紙だ。地域活性化に対する取り組みはもちろんのこと、食育にも貢献する。
瓶に貼られている子どもが手を振るイラストは、先代の奥様がデザインしたもの。ワンダフルのスペルが「WANDAFURU」というのも、オリジナリティがあっていい。
鎮西さんと奥様のマサ子さんのふたりで、ソース造りはもちろん、瓶詰めやラベル貼りまで全ての作業を行う。

ワンダフルソース

ハリマ食品株式会社
尼崎市食満2-12-15
tel:06-6492-6340(月~金 9:30~18:00)
事業内容:ワンダフルソース・ワンダフルとんかつソース、千々里醤油、ポン酢などの製造

[ 掲載日:2019年3月20日 ]