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食材研究 生産者に聞く旬の話

食材レポート55 大阪ぶどう(デラウェア) 生産者:西馬(にしうま)ぶどう園 麻野剛史(あさの つよし)さん (大阪府羽曳野市)

1本の木からいくつもの枝が蔓となって伸びている。左奥に麻野さんが小さく見えているところが先端の位置。

西馬ぶどう園の主力は、もちろんデラウェア。ハウス栽培はすでに出荷のピークは過ぎ、これからの時期は露地ものに移る。

ぶどうの生育をみる麻野さん。西馬ぶどう園は、こうしたハウス(一部は露地)が約10棟あり計1町(約1ha)で栽培している。

デラウェアの赤紫色に対し、粒が黒色の巨峰。袋がけは全部で約8万房になる。それをひとつひとつ手作業で行うのだ。

ぶどう工房のワイン。近所のワイン醸造所で今年できたもの。デラウェアの白2種で、右側がドライ。いずれも期間限定で9月末まで販売中。

日本のぶどうは、他の果物と同様、今や多様な品種が各地で作られている。市場には、姿形や色もさまざま、皮ごと食べられるものまで出回るが、近頃はとくに大粒が好まれるらしい。しかし、関西ではこれまで長く親しまれてきて一般に馴染みのあるのは、小粒で赤紫色をしたぶどう(デラウェアという品種)だ。

デラウェアに関して言えば、大阪には全国有数の産地としての歴史がある。かつては、全国一の生産量を誇る時期もあった(現在は第3位)。そこで、今もデラウェアを作り続けている大阪の生産者を訪ねてみた。場所は、ぶどう栽培の中心地、河内にある羽曳野市駒ヶ谷。ぶどう農家のひとつで、西馬ぶどう園という。

南河内地域は、金剛・生駒山麓に位置し、雨量の少なさと日当りや水はけの良さなど、ぶどう栽培に適していた。その始まりは明治時代初期。当初、ぶどうはワイン用だったが、やがて生食用も栽培。大正時代には病気に強いデラウェアが導入されるなど改善がすすみ、ぶどう農地は地域一帯に広がり、昭和10年頃には栽培面積が日本一になる。当時、ワイン醸造所は100軒を超えるほどになっていたらしい。

戦後も、露地とハウスを併用した収穫時期の調整、労力の分散化、デラウェアの種無し早熟栽培技術の実用など、ぶどう栽培は発展し、現在へと継承。とは言え、当然のことながら、ぶどう農家もワイン醸造所も淘汰されてはいる。

「ぶどうは、苗木を植えてから収穫できるようになるまで10年はかかります。こうしてやってこられたのは、試行錯誤を重ね、安定して育てられるように努力してきた地域の先人たちのおかげです」と、西馬ぶどう園の代表、麻野剛史さんは話す。

大阪の場合、すぐ近くに巨大な市場がある。現代の人口で確認すれば、大阪府は885万人、その内大阪市で250万人(京都府の262万人に匹敵)だから、その食を支えるためにはそれなりの数量が必要になる。たとえ、大阪がぶどうの産地であることさえ知らない人、大阪でワインが作られているのも知らない人が多くいても、これまでは地元で生産されるのを消費する人がいる限り、やってこられた。

けれど、誰も現状のままでいいとは考えていない。「デラウェアを大粒にしたり、新しい品種を手がけたり、改良に取り組む日々です」と麻野さん。「大阪府の支援もあります。普及員が栽培指導してくれるし、地元産のPRに力を入れているし」

大阪産のデラウェア、巨峰、ピオーネの3種は“大阪ぶどう”という呼称で統一され、なにわ特産品に選定されているが、市場にどれほど浸透しているかはわからない。行政まかせではなく、生産者自らの動きもあると、麻野さんは話す。

「若手が集まっての勉強会は欠かせません。そのなかから、ぶどう工房の名で自分たちのワインも作ってみました。デラウェアだけのワインです」別の情報源によれば、大阪ではカンボジアをはじめASEAN地域に向け、大阪ぶどうの新たな販路開拓も始まっているらしい。

それでも、果樹栽培には構造的な課題というのがある。良いものを作ろうと思えば、どうしても手間がかかる。「ぶどうは、蔓の調整、房の粒の間引き、ひと房ずつの袋かぶせなど、人の手でしなければならない作業が多いのです。どれかでも機械化できれば、もっと楽になるんですがね」

こうした日常の地道な働きの上で、なおかつ、将来につながる布石も打っていかねばならない。大変なことと改めて感じ、大阪ぶどうをもっと意識して食せねばならないと思うのだった。

[取材日:2014年7月26日]

大阪ぶどう
取材協力
・東果大阪株式会社
http://www.toka-osaka.co.jp/
西馬ぶどう園
電話(ファックス兼用):072-956-1054
大阪府「なにわ特産品」については、以下をご参照ください。
http://www.pref.osaka.lg.jp/nosei/naniwanonousanbutu/tokusanhin.html
[ 掲載日:2014年8月5日 ]

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