10周年を迎えて、関西食文化研究会の今後の方向性または展望

10周年を迎えることができて、関係各位に感謝の意を述べたいと思う。
あらためて振り返ると、調理の工程に現れる反応、現象、旨味の生成、人間の五感が美味しさをどう認識するのかなどに、科学的アプローチをし、実験、理解、解釈することを学ぶ期間であった。
そのような方向に多くの料理人やサービスマンをいざなってくれた川崎先生のご尽力には深く感謝している。
前述の科学的考察や研究は当然継続していき、より深く掘り下げていくべきだと思うが、これからの10年を考えると、飲食業が抱える多くの問題の解決や、文化や雰囲気など、単に物質や科学現象だけでは説明のつきにくい部分を攻めていくべきではないかと考える。
①腐敗、発酵、毒性をもつ細菌、化学物質、天然由来の毒、原虫、線虫、寄生虫、などを一度取り上げてみてはどうか。
②ベジタリアン、ハラル、アレルギーの人たちに向けての飲食店の取り組み。
③労働時間の短縮や人手不足に備える方法があるのか。
メニュー開発や仕込みの方法による、時間短縮や労力の軽減ができる可能性を探る。
④外国人、高齢者など今までの少し違う労働力の導入。
ビザの問題や労働条件など。
⑤就労人口の減少や少子高齢化によるマーケットの縮小と変化を把握し、どのように対応するべきか考える。
⑥第一次産業の現状を知る。
第一次産業における就労人口は減少しているのか、あるいは増加しているのか。技術革新は進んでいるのか。国内の食料自給率を上げ、クオリティを向上・維持するために我々にできることを考える。
⑦食のサステイナビリティについて考える。
本来の意味はともかく、現実的には人工的なものをできるだけ排し、自然主義の食材や調味料、お酒を好み、地産地消を目指し、食材の無駄をなくし、養殖や飼育の飼料や育て方に細かな配慮をし、地球環境と人々の健康を阻害しないことを第一と考えることだと捉える。
ただ、ごく限られた飲食店でそれを目指し、一般性のない価格でごくごく限られた人に料理を提供しても、環境に対する影響力は限定的であると思われる。全人口を巻き込むくらいの何か大きな動きに発展していかなければならないだろう。
⑧食にまつわる文化的考察。
日本をはじめとする各国の食文化は、単に食料を摂取する行為にとどまらず、空気、水、音、温度、湿度、風、そういったものを組合わせて食事を楽しむこととして育まれてきた。あるいは音楽、調度、器など、食材や料理以外の様々な要素が食を文化に高めてきたと言える。そこに焦点をあわせ、分析したり深く掘り下げてみてはどうか。
⑨食事中に流れる音や音楽で、食感や味の感じ方に変化は出るのか。
気温や湿度が味覚や嗅覚に影響を与えるか。さらに、照度はどうか。標高差や気圧は味覚に変化をもたらすか。悲しい、うれしい、楽しいなど、感情は味覚に変化をあたえるか。などは、テーマとしてどうか。
今後取り上げるべきテーマの一部として、いろいろ考えてみた。
[掲載日:2019年7月1日]