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料理人が刺激を受けた 味・技・人

料理人が刺激を受けた 味・技・人 66 ひとりになって食材と向き合う 土谷 哲平さん Ristorante「Due Fiori(ドゥエ フィオーリ)」オーナーシェフ

わかりにくいと評判になり、演出効果抜群のエントランス。ビルの側面に設けられた細い通路がアプローチ。飛び石の途切れたあたりに扉がある。


Ristorante「Due Fiori(ドゥエ フィオーリ)」
大阪市北区西天満4-10-4
新光西天満法曹ビル1F
TEL. 06-7710-7828

営業時間:ランチ/12:00または13:00の一斉スタート

ディナー/18:00または19:30の一斉スタート

定休日:日曜日

http://www.due-fiori.com

5月のアンティパスト「雉と鳥節のブロード 筍含め煮 北寄貝 木の芽 酢橘」は、写真のような器に盛られて供される。

土谷シェフ自らが雉と鳥節のブロードを持って現れ、器に注いでくれる。鳥節は、鶏肉を鰹節のように加工して薄く削ったもので、注目の調味食材。雉と合わせ秀逸な味のブロードがとれていた。酢橘を入れるとさらに絶妙な味わいとなる。

ランチコースのセコンド・ピアットは「神戸ポークのロートロ うすいえんどう豆 ラルド ピーテンドリル じゃが芋の粉 フレッシュチーズ」。写真手前のロートロにラルド、新玉ネギがのっている。ピーテンドリルはうすいえんどう豆の蔓。ひとつの皿に主役と名脇役の食材がしっかりと主張し合う料理になっている。

 土谷哲平さんは、イタリア料理の名店「ポンテベッキオ」で勤続18年目の2016年、同店を退社。オーナーシェフとなり、大阪市北区西天満にリストランテ「ドゥエ フィオーリ」を構えた。この春、開業して2年が経つ。当初は文字通り満を持しての独立に注目が集まったけれど、その期待に見事応えて評判を呼び、早くも人気店の仲間入りを果たしている。なかでも、土谷さんの創意に満ちた食材使いに対する評価が高い。

 「発想のもとは、季節感を表したいという思いなのです」と土谷さん。「季節ごとに出回る食材の多くは日本のものです。自ずと、日本人なら馴染みのある食材を、どのように料理すれば喜んでもらえるか考えるようになりました。着地点はイタリアンなのですが、まず、この季節、自分ならこうして食べたいとつくってみる感覚を大事にしています」

 例えば、春先には芽が出て美味しいとされる露地物のアスパラガス。「穂先も、ピュレに用いた下の部分も、湯がいた後氷水に浸す昔ながらの調理法で、淡いアスパラガスのうま味や香りをウニやキャビアに合わせました。ローストやエチュベなどうま味を逃がさない調理だとスッキリ感に欠け、ウニやキャビアに寄り添わないと判断したからです」そうして、トマトとアサリのジュレ、穂柴蘇やラディッシュなどの素材も寄り添う、春を感じる優しい味わいの一品が出来上がる。

 また、春はタケノコにも挑む。「日本人なら若竹と木の芽の取り合わせで春を感じますよね。そういう味覚は疎かにできません。極端ですが、トマトソースで煮込むようなことはしたくない。で、どうするかが考えどころです」

 開店以来、月ごとのコース料理でランチとディナーを提供する。5月のコースにタケノコを使ったアンティパストがあった。メニューには含め煮と記されているが、サーブされたカップ状の器にはタケノコと北寄貝の切り身が木の芽とともに盛られていて、そこに土谷シェフ自ら、だしを注いで仕上げる趣向。だしは、雉と鳥(鶏)節からとられたブロードなので、含め煮が一気に新たなうま味を滲ませることになる。和風でもイタリアンでもない、土谷さんの料理としか言いようのない組み合わせが、ひとつの答として供されるのだった。

 「月いちのコースに、一ケ月間同じタケノコで通す訳にもいきません。5月初めなら長岡京で獲れた孟宗竹、中旬以降は旬となる淡竹(はちく)へと変えながら、仕入れるタケノコの産地や種類に合わせて調理も調整しています」

 そうして、ひと月に亘って自分の考えをぶらすことなく料理に表していくという。「食材にこだわるのは、店の個性につなげたいからです」と土谷さん。長く山根大助氏の薫陶を受けたとはいえ、「ポンテベッキオの味」を継承するのでは独立した甲斐がない。お客さんに“違う”と言われて、認められたと思えるのかもしれない。何を個性のもとにするかも大事なのである。ひとりになり、季節感をテーマに掲げたとき、食材と向かい合うことで新たな道を開こうとしているように見えた。

 「今は、市場に出かけるのが楽しくて。これまで使ったことのない食材を見つけたりすれば、どう料理しようかと自問しています」と、食材にインスパイアーされる日々という。もちろん、料理ばかりではない。料理人自らサーブするように、形式にとらわれない新しいかたちのリストランテを目指していると話してくれた。

 取材に訪れたのは春先だったが、6月になればまた違った食材による土谷さんの料理が並んでいるはず。コースで季節を味わうイタリアンが「Due Fiori(ドゥエ フィオーリ)」のスタイルとして定着しつつあるなか、これからの展開も大いに期待される。

[2018年4月26日・5月11日取材]

[ 掲載日:2018年6月20日 ]

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