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料理人が刺激を受けた 味・技・人

料理人が刺激を受けた 味・技・人 62 炭火に魅せられて 山本 典央さん 「炭火割烹 いふき」主人


「炭火割烹 いふき」
京都市東山区祇園町南側570-8
四条花見小路南側四筋目東入六軒目
TEL. 075-392-3745

営業時間: 17:00~23:00
定休日:火曜日

2011年、祇園・花見小路に佇む現店に移転。かつてはお茶屋さんだった町屋を改装されている。

炭火焼き専用の焼台で開店前の準備をする山本さん。炭は調理に適した白炭で、なかでも雑味がつきにくいとされる備長炭を使用。

焼台からカウンターを見るアングルで撮影。焼台は高温になるので、カウンターとはやや間をとって設置されている。

 10代の中頃に飲食店でアルバイトするうち、日本料理に関心をもったのが始まりだった。きっかけはありがちだけれど、山本さんは違うなと思わせる話が続く。料理人となるべく本腰入れて修業しつつ、自分の将来につながる道を開くためには日本料理の料理人としての姿勢や考え方まで探ろうとしたらしい。

 ときには、反対のお客さんの立場で探るために食べ歩きもよくしたそうだ。その結果、このまま進んでも自分の行く先は他とあまり変わり映えしない、それでいいのかと自問が続いたという。そうしたなか、本来のとでも言えばいいか確固とした日本料理とは少しハズれてみるのもありと思うようになっていた。日本料理がどれほど奥深いかを充分体験し、一人前の料理人となるために腕を磨いている上でのことだ。

 「基本はゆるがないものの、日本料理といえども料理自体は進化しています。肉だって使うし、他ジャンルの手法も取り入れるし、調理機器も進んでいる」
 けれど、変えようのないことがあるのに気がついたと山本さん。「たとえば、いい食材があればそれに最も適した火入れをすれば美味しい料理が出来るのです」と。それから、火入れについて探求するなかで、炭火に行き着いたと話す。

 炭はとくに日本料理では従来から使われているけれど、徹底して使いこなすことで活路を見出そうとしたようだ。「炭火と思うほど、日本以外の国ではどういう使い方をしているのか実際に調べてみたくなって。とりあえず、スペインへ向かったのです。バスク地方にあって炭火焼き料理で知られるグリル『Etxebarri(エチュベリ)』では薪も使っているのがわかりました」

 こうなると、刺激どころの話ではない。ヨーロッパではスペイン以外の国もいくつか巡り、北米へも渡って大いに感化されて帰国。2005年、京都で独立する際には、炭火焼きをメインとした割烹という新しいスタイルを打ち出して『炭火割烹 いふき』をオープンさせた。

 魚は「強火の遠火」で焼くと美味しく出来ると伝えられている。炭火は800℃近い高温になるのが特徴。その強い火による遠赤外線効果で魚の表面は短時間でパリッと焼け、内部は伝導熱でゆっくり加熱されジューシーに仕上がる。その他、ガスの化石燃料は燃やすと二酸化炭素と水が発生するが、炭は炭素含有量が多く、水素は含まれないので燃やしても水蒸気は発生しない。などの利点が科学的にも実証されている。

 山本さんは、その炭火の利点を生かすためにも食材ごとに合わせた下拵えを大事にしている。アワビなら柔らかく煮てから炭火でさっと炙ることで、コリコリしながらふっくらとした絶妙な食感が生まれるという塩梅。今では、下拵えには低温調理も多用するなどより力を注ぐ。

 「炭火なら香木や香草も同時に燃やせ、食材の香り付けも容易ですし、まだもっと出来ることがあると思います」と山本さん。探求心旺盛な性格は食材選びにも及ぶ。地元産の京野菜をはじめ、国内外の産地から取り寄せた肉や魚介類にジビエなど多様かつ上質な食材は、炭火によって新たな味わいが引き出される。「いふき」が京都でも予約の取れにくい人気店のひとつとなったいま、炭火割烹はどのような進化を果たすのか、これからの展開にますます注目が集まる。

[2017年6月8日取材]

[ 掲載日:2017年9月25日 ]

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