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食材研究 生産者に聞く旬の話

食材レポート72 食用ホオズキ 道安宝珠喜(どうあんほおずき) 出垣 滋(でがき しげる)さん・前嶋 文典(まえしま ふみのり)さん(奈良県天理市)

幅5m×奥行き38mのハウスが2棟並ぶ。1棟平均で約90株のセンナリホオズキが育てられている。

株の間に余裕をもたせているほうのハウス内。畝の間にゴザを敷いたり、栽培の工夫が見られる。

センナリの名のとおり、枝に鈴なり状態で実がつく。この実が25〜27個詰めのパックで約2,000パック収穫できるという。

 

手のひらからもわかるように実は小振り。袋状の“がく”は、ホオズキと同じナス科のナスでは“ヘタ”になるらしい。

奈良で食用のホオズキが栽培されていると聞き、生産地を訪ねた。畑があるのは奈良県天理市山田町。大和高原らしい山間の道を進み辿り着くと、猛暑にもかかわらず空気はさすが爽やかだ。案内されたハウス2棟でそのホオズキは育っていた。

食べられるのはセンナリホオズキという品種。アメリカ原産なのに何故か日本では野生化して古くより各地になっていたそうだ。山田町にもあるのを知り、20数年かけて定期的に収穫できるよう栽培方法を確立させ、商品化させたのが出垣滋さんだ。今では地域に縁のある武将の名を冠して「道安宝珠喜」と名付けられ出荷されている。

出垣さんにハウスの中を見せてもらう。1棟は密生、1棟は株の間を空けと、生育を調整している様子。「雨露に弱いのと落ちた実のカビを防ぐためハウスにしているようなものです。殺虫剤は椰子油から作る天然ものを少し使うだけで、後はテントウムシやクモによる自然駆除まかせ。堆肥は、鶏糞や豚糞を溜めて独自に作っていますし」と話すのを聞くうち、今に至るまでの試行錯誤の積み重ねが思いやられる。

2月に種を蒔いたのがちょうど実になる時期で、花の外側についた黄色い“がく”が実を包む、ホオズキ独特の姿を見せていた。見慣れた観賞用の実より小振りだ。がくを剥くと“食べられる”丸い実が出てくる。囓ると実のはじける食感とともにトマトに似た甘酸っぱい味覚が広がる。夏から11月くらいまで収穫できるという。

「こうして商品になり得るものが作られるようになりましたが、課題は残したままでした」と出垣さん。「栽培に一所懸命だったから、どのように販売すればいいか流通させるまでの考えが及ばなかった」というのだ。

現在そうした課題は、元奈良県職員の前嶋文典さん(現「NPO法人日本無形文化継承機構」理事長)のサポートによって解消されつつある。前嶋さんには、大和野菜を広めるなど県の農政に長年関わってきた実績があるのだった。「6年前にお会いし、パートナーとなっていただくことで大きく前に進められたのです」と出垣さん。

前嶋さんは「食用ホオズキの魅力は、野菜のような果物のような味わいと生でも加工でも美味しくいただけること。それに流通量が少ないから希少な食材としての付加価値も高い」と話す。そうして地元をはじめ大阪や東京の市場へ進出し、料亭やレストランなどへと販路を広げることに尽力。その間、出垣さんは、品質を安定させ、甘みを引き出す保存方法を開発するなど栽培生産により力を注いでいく。

その後、2人は料理店へのレシピ提案やコンフィチュール開発など展開。そこでつながりのできた仲間達とともに「道安宝珠喜」を奈良の新ブランド食材とするべくプロジェクトを起ち上げ、活動内容も多様になっているそうだ。

「お付き合いのないレストランやオーベルジュなどからも注文が入ったりするようになり、ようやく私も食用ホオズキ専業になりました」と出垣さん。20数年一途にあきらめることなく取り組んできた故の賜物は、新たな関係とともに可能性も広げてくれる。奈良に食用ホオズキ「道安宝珠喜」あり。大いに注目されたし。

[取材日:2017年8月4日]

食用ホオズキ 道安宝珠喜(どうあんほおずき)
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[ 掲載日:2017年8月25日 ]
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