「アフターコロナに向けて 困難に立ち向かう『新しい世界の構築(つくりかた)』」

Program 3:円卓会議(ディスカッション)

本田直之氏
(レバレッジコンサルティング株式会社代表取締役)
中本由美子氏
(「あまから手帖」編集長)
山口浩氏
(「神戸北野ホテル」総支配人・総料理長、コアメンバー)
吉岡勝美氏
(辻調理師専門学校中国料理技術顧問、コアメンバー
山根大助氏
(イタリアンレストラン「ポンテベッキオ」オーナーシェフ、コアメンバー)
髙橋拓児氏
(京料理「木乃婦」三代目主人、コアメンバー)
進行:門上武司氏
(株式会社ジオード代表取締役、「あまから手帖」編集顧問、コアメンバー)

門上氏 コロナ禍によって新しいシステム、新しい世界観が出てきている。そういう時こそ新しいチャンスも生まれるはず。売り物、売り方も変化してゆく。(コロナ禍でなくても)近い将来に変わっていたかもしれないことが、既に現れているようにも思われる。こうした現況に、料理人たちはどういうチャレンジをしているのかを問うことから円卓会議を始めます。
*以下、各小テーマごとに各者の発言を要約しました。

転機はチャンス

山口氏 これまでだったらダメだろうと思ったようなことが、功を奏するということがある。例えば、ホテルの宿泊客だけが利用できる人気商品があった。それを宿泊しなくても利用してもらえるようにしたら、来館者が考えられないほど増えた。新しく生まれた魅力が、顧客から顧客へと伝わり広がることで需要は増えていくのだと実感している。

髙橋氏 今は、これまでの顧客層をもっと手厚くもてなそうと考えている。(仕事が減り)時間が取れるようになって、スタッフ間でのコミュニケーションが深まった。意識統一も深まり、顧客にどういうことができるかを話し合えるようになった。その結果、顧客それぞれに個別の対応がより細かくできるようになった。こちらでお席を用意する際には、お祝いごと、集まりなど用途や目的も確かめられる。

お弁当も、それぞれ食べられる場面に応じて、ひとつずつ特化したものを作るようにしている。お弁当にはもともと定型があるのだが、今はプレタポルテ(高級既製服)のように少し手直しするなど、個別の要望に細かく対応できている。スタッフとのコミュニケーションが深まると、サービス面でもより細かな対応ができるようになった。

山根氏 顧客から熱心なファンになってもらえるように、ということを考えている。カスタマーズカードもデジタル化させるなど、常連さんになってもらうことのメリットを増やしていこうとしている。店内イベントも増やす傾向になっている。そうして熱心なファンに来店してもらっている。

ファン・マーケティング

本田氏 2割の顧客が店の8割の売り上げを支えているといわれるが、ファン・マーケティングではこの2割の顧客を常連さんととらえ、丁寧に対応することを勧める。ファンが新たなファンを連れて来てくれる方が、新規顧客を獲得するために努力するよりも効率がよいはず。

吉岡氏 1970年代からロードサイドに出店する動きが始まった。中でもファミレスは安価なメニューが注目され、子供から高齢者まで家族で利用できるレストランというイメージがその後の発展の要因と思われる。しかし、これからは価格に表れないホスピタリティの部分、思いやりや気づきがより大事になってくる。

料理人やサービス要員には、日頃から内面を豊かにしていけるかどうかが問われている。そうする努力が顧客(ファン)を惹きつけることにつながってゆくのだと思われる。

リアルな現場

中本氏 今や顧客がどんな思いで食べに来るのかを、これまで以上に感じている料理人が増えている。例えば、換気・手の消毒・検温なども安全のためとはいえ、顧客から不快に思われないようにバランスを保ちながら安心していただくことにも慣れてきた。「こんな時にわざわざ来ていただいて」と、来店者に感謝する気持ちが大切になる。

山根氏 コロナ禍でいろいろ対応してきて、飲食店に来られる人が変わったと感じている。安全が担保されていれば食べに行ってもいいと、思われている人が多くなったように思う。

髙橋氏 うちはもともと社用や商談会での食事使われることが多いので、先方からは「店に行っても大丈夫か」、「どういう感じで席を設けるか」と、よく問われる。今は、広間(90人収容)を半分ずつにしたり、普段なら30人以上が入れるところを15人に絞ったりしている。部屋の設えまで細かく注文される場合もあり、事前に席のレイアウトを見て確かめてもらうなど顧客との双方向的なやりとりを行っている。

先のお弁当のように料理のプレタポルテ化だけでなく、空間や時間など、あらゆる要望に応えられるような構造に変化してきている。店と顧客、相互に情報が多いほど顧客満足度は高くなるように思う。

山口氏 コロナ禍で、食は人と人をつなぐ大切なツールであるという認識が深まった。一緒にものを食べる行為は人と人をつなぐ。そういう意味で、食が復権したと捉えられるのではないかと思っている。コロナ禍は、食に対する人々の認識が風俗的なものから本来の文化的なものへと変わってゆくターニングポイントになっているのではないか、と。

食に携わる者は、ソーシャルに何をするか。まず顧客に認められること。飲食で収益を上げながら持続的な経営ができる、そういう時代にしなければならない。

新たなスタイル

本田氏 コロナ禍で家にいることが多くなると、家族の楽しみとして食が見直され改めて大事になっている。それに対応すべく、お取り寄せ、テイクアウトなども幅広く多様になってきている。加えて、ゴーストレストランのように店舗を持たない形、これまでなら考えられなかった新しいスタイルも生まれ始めている。

食のDX(デジタルトランスフォーメーション)化に関していえば、デジタルに詳しい若い人たちが飲食ビジネスに参入し、今までになかったようなやり方で新しいビジネスをつくっている。それを関係ないと無視することはできない。経営者がデジタル化に関して意識しないままだと、かなり危険な状況になる恐れがある。

中本氏 大阪にはスパイスカレーの事例がある。ヤドカリとか間借りといわれる方法が、若い人たちには普通のように受け取られている。そういう下地があって、新しいものが生まれる。

飲食店は学ぶ場であったし、料理人と顧客のコミュニケーションの場でもあった。同じコミュニケーションを取るにしても、これからは、通販ならどうか、テイクアウトならどうか、といった新しいコミュニケーションの取り方がテーマになってゆく。

吉岡氏 客商売で大切なのは顧客にいかに喜びを与えられるかであり、技術や知識を超えたものが必要になる。店に出かけ、料理人と話す、他業種の人と話す、そういう機会をいろいろと持つことも大事になってくる。

食のDX(デジタルトランスフォーメーション)対応

山根氏 SNSに関しては、充分ではないがいろいろ取り組んでいる。デジタルでの撮影にも編集にも、それなりの技術が必要だとわかる。こちらも、単においしく作るだけでなく、メディア戦略、SNSでの発信、マーケット対応などが必要な時代であることは理解しているつもりだ。

しかし、それらを一人で兼ね備えた者などいない。そうなると弱いところを補ってくれる人が求められる。デジタルにしても、得意とする人と組むとか、分業にするとか、そういう対応が必要な時代だと感じている。

本田氏 先の基調講演で紹介した『鳥幸』をサポートする会社にはIT部門がない。BASEというEC(電子商取引)のアプリがあれば簡単にECサイトを作ることができるので、社内で自前のECシステムを起ち上げ「体験型取り寄せ」を始めた。さすがに今は取引数も増え、人を入れて緻密に構築し直しているが…。コストもかからない、投資もしなくていい、それで簡単にできて売り上げも伸びる。まずは試しに始めてみて、勝算がありそうなら投資することもできる。そんな、おもしろい時代になってきていると思う。だから、思い切って若い人に任せてしまってもいいのではないか。今は走りながら作っていく、そういう時代だと思う。

髙橋氏 デジタルに強いスタッフを厨房に入れていて、店のことも理解してもらうようにしている。すぐに結果が出るとは思わないが、料理もできてDXにも強い人を育てたい。店の哲学もわかった上で店に合ったDXを進められる、そういう人材を増やして店の幅を広げていきたいと考えている。

山口氏 今、アウトソーシングを重要視している。DXというのは、レストランをデザイン化して付加価値の高い業種に変えることのできるツールだと考えている。

まとめ

門上氏以上のディスカッションから、熱心なファンをどのようにして育てていくかが大事であるということがよくわかりました。また、厳しい現況の中、立ち止まっているより、走りながらでも、実験的であろうとも、何かしようと思ったら、まずはやってみることも大事だと感じました。

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