「肉と火入れの新時代」

開催日:2019.7.7

Program 2:料理実演と試食 [日本料理]

高橋 義弘氏
「瓢亭」15代目主人
料理
「土佐あかうし 翡翠茄子 香味あんかけ」

肉を使う時は気を遣います。「どんなことができるか」ということで今回の料理を提案します。「土佐あかうし」は、おいしい肉を探して産地をめぐり牛に触れたりしている時に出合いました。親しみやすい牛で、見た目がかわいいから食べるのがかわいそうですけど、食べるとおいしい。香りがおいしいのですね。最初の出合いも熟成肉の店で、香りを嗅いで赤身のうま味とこの香りに魅了される思いがあり、そこから使うようになりました。土佐あかうしの特徴は、うま味が強いこと。脂の融点が低いのでサラッとしている。肉が熟成にも向いている。

最初に肉(土佐あかうしの肩ロース)を焼きます。塩をしないで焼きます。炭は焼き目がきれいにつくんですね。全体が温まるように満遍なく焼きます。炭火の場合、炭がいこりすぎていると、部分的にきつい焼き目がつくんですが、炭の表面に灰がかぶるくらいだと上手にジワッと満遍なく焼けるので、そういう状態で使います。たたきはフライパンでやってもいいのですが、なぜ炭にしているか。グラデーションがつき、肉の表面だけ香ばしくなるのではなく徐々に火が入るように炭を使っています。自然にグラデーションをつけて火入れをしていきたいので、炭火でやっています。短時間でも焼き目はつきやすい。肉の熟成が効いている方が、焼き目はつきやすい。個人的には塩だけで焼いて食べる肉が好きなんですが、今回は味を含ませた形にしています。大きさは扱いやすい厚みということで3.5cmにしています。肉の場合、大きい塊で焼くのは難しいし、細かいものに対応するには、ある程度扱いやすいサイズにしたい。店で塊を焼く時は、焼いて休ませ、焼いて休ませを繰り返すので、最初は軽く焼いて2回目、3回目はしっかりと香りをつけることを繰り返し、サイコロ状にカットして提供しています。

一旦冷ましたものを薬味と一緒に漬け込みます。レシピには「香酒地」としていますが、基本は日本料理でいう「幽庵地」です。うちには7・4・2・1の割合がありまして「煮切り酒」7に対して「みりん」4、「薄口醤油」2、「濃口醤油」1の割合に、柚子や生姜の薬味を入れます。今回は、そこに紹興酒と花椒と実山椒の青いものが入ります。肉は香酒地とともに真空の状態にして冷まし、袋に入れたまま二晩置いています。よくマグロなどで表面をしっかり焼き付けて甘辛い醤油につける「漬け」がありますが、そのイメージからきていまして、1日でも味と香りはのりますが、今回は2日間漬け込んでいます。

漬け込んだ肉を天ぷらにします。ざっと表面の水分を拭き取ります。余分な水分がついていると焦げたりするので、あえて拭き取ります。全卵に水を加えて溶かします。卵白がつないでくれるので、全卵の中に水を入れて溶く形でやっています。全卵に対して同量くらいの小麦粉で、衣は厚め。なぜ天ぷらにするか。パン粉のようなサックリ感を表現したいことがあります。ただ肉の塊をそのまま天ぷらにすると肉の縮みもあったりして揚げてから時間が経つと衣が浮いてきますので浮きがないように表面を焼いています。表面を焼くことで衣が接着します。油は、衣を落として鍋底まで落ちてすぐ上がってくるくらい160℃が目安です。大きい塊ですけど、ドボッと揚げます。厚手の状態です。これで2分が目安。衣が固まって肉自体が温まってくる状態。少し温めるようにして。料理屋は天ぷら屋と同じようにはできないんですね。お座敷までの距離があるので、料理屋としての料理を提供したいということもあって、こういう揚げ方にしています。料理でこういう扱い方をすると一つの表現方法になるので「温度帯の違い」を活用しながら料理を構成してみました。あえて肉の厚みは3.5cmにして、揚げる目安は2分。肉が真ん中に浮いてきていますが、脱水してくると音がしてきます。天ぷらは音で揚げるといいますが、今、157~158℃です。時折、返しながら揚げる。揚がったら紙をかぶせて保温しておきます。切らなければ、ある程度温度は保たれます。

翡翠茄子を作ります。長茄子のヘタを取り油でサッと揚げて氷水に落とし、皮を向いたもの。これを野菜だしに漬けています。野菜だしに使っているのは、大根、南京、キュウリ、この時期ですとトウモロコシ、枝豆など、夏野菜は何でもいいので活用してもらって。そこに醤油と塩。昨晩に茄子を漬けておき、今、温めています。
肉を取り出して休ませている間、餡を作っていきます。先程の肉が漬かっていた香酒地が鍋に入っています。香酒地は味が濃いので野菜だしで緩和する感じです。ここで多少、味を調整するのに濃口醤油を足します。そこに葛でとろみを付けます。
油が182℃まで上がってきました。肉はまだホワッとした柔らかい感じがあります。衣を固める感じで再度揚げていきます。二回目に休ませる時は、そのまま放置しておきます。温かいところに置いておいて余熱で火入れをする感覚です。

盛り付けをしていきます。翡翠茄子を置いて、薬味を生姜、ミョウガなど夏らしいものを添えて、手前に赤い肉。揚げてすぐだと肉汁が出てくるので休ませていました。衣がちゃんと肉に密着しています。この状態で切ります。切っても剥がれません。この形を保つために、こういう調理の仕方をしています。

肉が好きで、大阪まで「土佐あかうし」を食べに行きます。肉自体も餌や肥育の状態によって火入れが変わってくるので、いろんな肉を扱うのは難しい。まず肉の扱い方をきっちりとできるようになって、なおかつ適切な火入れを選んでやることが大事かなと思います。今回は特殊な形で料理をさせてもらいましたが、こういう料理の仕方もあるということを見ていただきました。どうもありがとうございました。

「土佐あかうし 翡翠茄子 香味あんかけ」