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イベントレポート/メイラード反応とは何か?

ディスカッション

門上 メイラード反応を検証しようということですが、まず、会員の方からいただきました質問に答えていただきます。

川崎 「低温調理の真空調理とメイラード反応の関係について」質問をいただきました。 真空にして、そのまま低温調理にかけるのもいいんですが、ぞれだと、表面にメイラード反応が起こっていませんから、後で起こしてもいい、ということだと思います。最初にメイラード反応で焼き色をつけておいて、真空パックに入れるのが普通だと思います。それでも、最後にまた焼きをつけるんですね。最初につけただけだと、メイラード反応の香り成分は水に溶けるんです。普通の香り成分は油に溶けます。メイラード反応は、つけて加熱するとドリップが出て香り成分が移ってしまうので、最後は表面を焼いた方がおいしいだろうなと思います。

山根 真空調理の場合、バキュームを分厚くする時に、肉の香りが入り込みやすいんです。吸い込んでしまう。通常につけた焼き色とかハーブの香りよりも、強く反応してしまうので、あまり強い焼き色をつけられないんです。メイラード反応のいい香りの範囲だったらいいんだけど、苦く感じたり、焦げ臭く感じたりするのが肉の内側に入ってしまうと、パックの中に閉じ込められているので逃げるところがないんですね。液体に溶け出て、そういう味につかっている状態になるので、一般には焼き色を最小限にし、真空調理してから最後に焼く方法をとるんですね。

木下 真空調理の場合は二つあると思いますが、一つは低温調理ということ、肉を焼くロゼの温度は58度ですね。もう一つは、バキュームをかける時に中のもの自体にも気圧がかかるのです。縮まる時に組織も縮まる。その時に外側の液体、香りが中の空いたところに入る。表面の焼き色や香りも、縮まる時に中にギュッと入り込んでしまうのです。そこのあたりを真空調理の場合は理解された方がいいと思います。 パスタを練って卵の水分を小麦粉に入れるんですが、時間かない時はパッと練って、そのまま真空にかけるんです。小麦粉の中の水分、卵がギュッと、より速く浸透します。また、果物のシロップを20度くらいにつけて真空にしますと沸騰しますので、縮まる時、中まで透き通ったようにシロップが入るんですね。それがガストロパックという、気圧を下げて中に滲みませる機器が進化してきたわけです。

門上 メイラード反応をテーマにしましたが、分析することで、もっと知りたいという、いろんな人から話を聞いたりすると、料理することが面白くなる、もっと研究したくなる、違う方法が生まれるのではないかと思いますが。

山口 食に携わっていて、人の問題は大きいと思います。伝承は伝え方の変化が大きくなっている。今は、若い人が給料が出るか出ないかわからん状態で朝から晩までは修行できないし、その中で、どういうふうに伝えていくか。シェフには大切なことだと思うんですね。 サイエンスというツールを使って的確に伝えることができれば有効だと思います。僕は57度がギリギリやと思っているんですが、温度を計れる、ちゃんとした器械がなければ、やってはいけない。そうでないと、リスクがものすごく増えるし、多分事故が起こります。食の安全性が大事だということで、そのへんは、よく注意していただいて。低温調理する場合は、マスクや手袋をするとか、まな板をしっかり殺菌するとか、しっかりした環境の中でしかできませんので、誤解のないようにお願いしたいと思います。

門上 そういうことも含めて研究していくことが大事だと思いますが。村田さん、今日は新しい発見とかはありましたでしょうか?

村田 今日、講義を聞いた料理人と、聞いてない料理人の間では、えらい差ができますよね。メイラード反応は何かというよりも、どういうふうにしておいしくなっていくかという構造、どういう部分をおいしいと思うかを解明していく、科学的に立証できると調理にも幅ができる。 あそこまでホタテはよう火を入れんわな、というようなことは、技術面と違って、それが個性なんでしょうね。和食は和食の個性であり、フレンチはフレンチの個性だと思います。それは大切にしないといけない部分。技術の部分は世界共通で和洋中を問わず、科学的な目でみると同じような反応が起こっていることを知る。その自分でわかったことを、いろんな人に伝えることができて、料理の発展に貢献するのではないか。今までの日本料理のように、勘とか経験に頼っているだけでは世界の料理と溝ができてくると、つくづく思いました。

木下 料理というのは人間がつくりだしたもの。先人たちは何度も繰り返し、時には食べて、運悪く死んだ人もいるかもしれない。それを繰り返しつつ今の料理にしてきたのです。メイラード反応は各国の料理にあるわけですね。料理というのは人かつくっている以上、解明しすぎて、横並びにすると各国同じようになる。文化とか、歴史があって、人がつくって、人が伝承していく時には曖昧なんです。全員の人が理解できてないこともあるわけです。技術を伝承したり、親方がやっているのを見て「あんなふうにしているんだ」と思っていても、親方は本当にそう思ってないかもしれない。でもそれが時代によって伝承していくことが、その土地に根ざす文化であって、歴史なんです。これから先も料理人は曖昧さを残しつつ解明された科学でやっていかないと文化はなくなるのではないか。国の文化によって料理は変わってくると思っています。

門上 この会場にはいろんなジャンルの料理人がおられます。今日の感想をお願いします。「祇園さ々木」の佐々木さんと「トラットリアパッパ」の松本さん、いかがでしたか。

佐々木 関西食文化研究会ではメイラード反応というのがよく出てきて、何の話か、よくわからなかった。それが、今日は、理解ができたかなと思います。それで、どんどん幅が広くなっていく。僕が感じたのは、先人は、ほんとに偉いなと思います。今やっと理解していき、基本、基礎がこういうところにあるんだなと感銘を受けました。こういう場で、ぜひ研究させていただいて、改めて料理につなげていくことについては、よろしくお願いしたいと思います。

松本 とても勉強になりまして、とてもおいしかったです。科学は、よくわからなくて、関西食文化研究会に参加させてもらい、諸先輩から継承してきて「これはこうするもんや」と思っていたことが、実はこういうことやと知る。それからどうしていったらいいか。いろいろ考えさせられます。山口さんがいわれたように、若い人の育成のために理論でも教えないといけない。これからも僕のテーマだと思いました。

門上 「木乃婦」の高橋さんは、村田さんとも親しく、京大のラボで研究されたりしていますが。本日それぞれのメイラード反応の理解はいかがでしたか?

高橋 メイラード反応は「日本料理アカデミー」でマグロをテーマにした時も取り上げました。マグロの造りを食べる時に、醤油を使わずに、醤油を作りました。マグロの骨の一匹分を低温で乾燥させ、昆布と屑野菜と酒をたっぷり入れて煮詰め、少量ずつ焦がして、メイラード反応を強制的に起こして焦げたら、また足して、というようにソースを作ったんです。 今回のメイラード反応についても、山口さんがやられたような単一の糖と単一の酸を組み合わせてメイラード反応を起こさせる味、香りの単一さ。それと、いろんな食材を使ってメイラード反応が起こる複雑さは違うな、ということを実感できました。220度で焦がして、210度と220度、230度をミックスしてとか、加える酸によってコーヒーのブラジルとキリマンジァロを混ぜたような感じの味と苦味ができるのかなとも思いました。一つひとつ基礎的な部分で勉強になりました。

門上 「一之船入」の魏さんは、中華でしたら、どういうアプローチですか?

 煮込みですね。煮込みのメイラード反応をやりますね。醤油と中国醤油を使って煮込んで煮詰めていく。今日、感じたのは、山根さんの料理です。僕たち中華料理では、挽き肉をカラカラに炒めていく。白髪ネギをみじん切りにして、高温で揚げて1か月間干すんですね。干したものを、挽き肉をカラカラに炒めてものに油と入れてソバにして、碗子麺というのですが、似ているなと。そいれで干し貝柱を使ったら絶対、違う味になるんです。今日のは、ホタテを生から使い、味が出てきて香りがすごい。 川崎先生に質問したいのは、中華で蒸しスープをつくる時、メイラード反応は起こっているんですか?

川崎 蒸しスープですが、温度は100度なので時間がかかりますが、ちゃんとしたメイラード反応が起こっていて、香ばしい香りがします。挽き肉でやったら、挽き肉は最初濁っていますが、4時間くらいでキラキラッと澄んでメイラード反応が起こりますよ。

門上 山根さん、また違うアイディアが出てきますか?

山根 中華とイタリア料理は共通点が多いと思うんです。塩漬けにして熟成させた素材を使ったり、よくします。長期間乾燥すればメイラード反応が起こりますが、素材に手を加えて、うま味の成分とかを引き出して凝縮して、料理の味のベースにするという部分では参考になることも多いし、自然にそうしたくなりますね。調理を考えて、分析とか、なぜそうなるかを科学的に解明することは興味があるんですが、調理と料理は違うのではないかと。
調理は火を加えたり、干したり、揚げたり、蒸したり、切るだけでも調理ですね。素材に対して的確にやることが大事で「最適調理」といってます。料理は最適調理の素材を組み合わせたり、一つの皿に仕上げることを料理と呼ぶのではないかと思います。 調理には国籍がない、個性でいえば、その上に個性がある。どう料理に仕上げるかは、その人の思考性とか料理ジャンルで持っている性格が必ず現れます。イタリア料理ではイタリア人の食性にあわせているから、フレンチとの違いは出るはずなんです。調理には国籍はない、理論には国籍はないということを、皆さん、おっしゃっているのかなと思いました。

川崎 日本料理の呪縛を、すごく感じることがあります。日本料理には醤油とダシの呪縛を感じるんですね。醤油とかダシがなかったら世界のどこへいっても料理できないと思っていたのが、村田さんは、ダシを鰹と昆布以外で作られる。今日も醤油を使わずに料理された。それが多様性だと思うのです。 日本料理にとって、こういう考え方は、これから大事になっていって、世界中どこにいっても、何もなくても日本料理ができてしまう。村田さんの料理ができるというのが重要だろうと。そこが面白いなと思いました。

村田 先日、バルセロナへ行ってきました。グローバルサミットがあって、ダシの定義を提示してきました。“複数の成分、グルタミン酸、イノシン酸、グアニール酸、琥珀酸、という複数のうま味の成分を相乗させて6倍~8倍以上になり、なおかつカロリーがほとんど0に近いものをダシという”と。世界の端に行こうが、どこに行こうが、日本料理を作られる。それを世界に伝えることが日本料理を世界に広げることになると思っているんです。 イタリア料理とかフランス料理は、規約とか規範を設けず、だから世界に伸びてきたんでしょう。どこの国においても、そこの国のものを使いながらイタリア料理を作る、フランス料理を作ってきた。日本料理だけ「ではなくてはならない」みたいなことが今まであったわけです。

山口 油脂分は1gで9キロカロリー、うま味成分は0カロリー。欧米では太っている人が多いから日本料理だと。世界的にみると、そんなにカロリーをとらなくていいといわれるようになっています。しかし、30年前には1粒300mという、うたい文句があった。それが、今は0カロリー。これは一部の先進国だけの話ですね。ほんとは1gで9キロカロリー与えないといけない人もいるでしょう。何が優れているかは立ち位置によって違ってきますから。でも、うま味がすばらしい、そのために邪魔になるのが燻蒸臭の調味料で、それを外した時に日本料理は、やっとフランス料理に挑んでくれるのではないか(笑)。

門上 それぞれ皆さんの理論があって、ここで話をすることによって次の手を考えていただけるようです。料理について、いろんな人と話をすると、いろんなメカニズムがわかってきて、研究しようと、また次のテーマが出てくる。次々と開けてくると思います。 「関西食文化研究会」では、今後も、いろんなプログラムを用意していきたいと思います。いろんなテーマで展開していきたいと思いますので、これからもよろしくお願い致します。本日はありがとうございました。

「関西食文化研究会」では、交流をテーマに
今回のようなイベントを順次展開していきますので、ご期待ください。

「祇園さ々木」の佐々木浩さん

「トラットリアパッパ」の松本喜宏さん

「木乃婦」の高橋拓児さん

「一之船入」の魏禧之さん

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