ハグミュージアムイベント「小山進の考えるショコラ〜世界が評価する表現力〜」

開催日:2015.9.1

第4章:まとめとメッセージ

門上 小山さん、お疲れ様でした。本日の「考えるショコラ」の会は、じつにエキサイティングでした。温度帯もいかに大事かわかりました。僕はコーヒーも大好きで、コーヒーの話をうかがう時、「酸味」というキーワードが出てつながる。関西食文化研究会では、料理の世界でフレーバーデザイン、香りをいかに使うかによって料理の味わい方が違ってくることに注目していますが、ショコラもそうですね。

小山 全部そうです。

門上 今日、マリアージュの話とか酸味ということが出てきたのは、まさに時代の最先端。スペシャリティコーヒーが出てこなかったら、あの酸味がつながることはなかったかもしれません。

小山 消費者の方とともに育たないといけないという、それが揃ってこそ僕たちのものづくりは表に出るんですね。続けることができる。スペシャリティコーヒーがいい役割を果たしてくれていると思います。

門上 小山さんはデータを持って科学的にアプローチされているんですけど、でも「何となく」とか感覚的な話もありました。どっちが先なんですか。

小山 「何となく」が先です。「何となく」のピントがあう確率が高くなるためには、常に「何となく」を人に説明することがあるので、それがトレーニングになっている。すると「何となく」を具現化できる機会も多くえられていると思うんですね。そうして「何となく」の精度がだんだん上がっている。もっというと、自分の仕事は「何となく」くらいの自然な感覚でできた方が楽しくなるんです。けれど、食事にいくと「この料理はなんでおいしいのか、あの一皿、僕やったらこうするのに」と、常に考えながら他人の料理を前にすると勉強できるじゃないですか。自分のクリエーションは、そういうことを構築して、歳とともにどんどんためて、その中で楽しくやっていたいというところがあるので、食事が常に勉強になっていることは事実です。例えば、「オマール海老とバニラは絶対合うよな」と思えるのは、どこかで経験したのが記憶に残っていたりするからです。コーヒーは苦味と思っていたけど、酸味も大切な要素やったと。ショコラだったら昔はベネズエラのちょっと苦いショコラと合わせたいなと思ったけれど、最近は違う。マダガスカルやペルーのもある。バニラは何と合わせていたか。バニラと似たようなものと合わせていたけど、最近はバニラに思い切り酸っぱいものを合わせるとバニラがものすごく表現できることもわかってきた。料理の世界でいえば「重ね味」の感覚なんですけどね。

門上 料理はまず食材があって、そこからどうしようかと組み立てるのですが、お菓子の場合、ショコラにしても温度とか分量とか、先にレシピがあるような感じがするんですが。

小山 はじめに経験があって、誰かが考えたレシピを覚えるところから始まります。でも、僕は仕入れの検品から、形は苺やけどこれ本当においしい苺なのか?というところから入る。それは、料理人感覚やと思う。僕はそういう感覚が大事やと思っていて、パティシエももっと料理人感覚で、素材ありきであるべきと思っています。1年間アイデアをためるけど、それを形にする時は素材が必要なんですね。世界各国からカカオマスやクーベルチュールやカカオ豆を入れてきて、それを食べた印象を書いて残しておき、自分のアイデアと照らし合わせて合致させないといけない。

門上 これは苺の形してるけど本当にすばらしい苺の味なのか?火を入れたらとか、凍らせたらとか。料理の感覚ですよね。まさに。

小山 料理人さんと話すの、面白いですよね。料理人さんとのつながりの中で声をかけていただくことが、これからの未来、パティシエにとって大きな門戸やと思っています。もっと料理人と切磋琢磨する必要があるような気がします。

門上 料理人は日常はずっと仕事があるので食べにいけないんですが、小山さんのようなパティシエの場合は、時間がとれるということが一つの強み。その強みをどう生かしていくか、小山さんのクリエーションで。今日のショコラは最初にカカオというフルーツをどうとらえていくか、「何となく」もありますが、相当勉強をされていて、小山さんがいわれる「圧倒的」であるとか、そのフレーズが今日はまさしく形になったと思います。

小山 最近、小学校など子どもたちに関わる方の前でお話をさせてもらうことがありますが、「夢中になる対象はなんでもいい」と伝える事にしています。僕の場合はそれが虫採りやったんです。ただ一冊の与えられた昆虫図鑑は、大事にできた。虫を採って図鑑でチェックして「この虫はどんなところに、どんな季節にいるのか」「北海道にはなぜ生息しないないのか」などと、「なんでなんやろう?」と突き詰めていった。そのうち、対象が虫と違うものになって。20代は目の前にあるのは「洗い物」やったから、どれだけ熱いお湯で衛生的に一人でも早く洗えるか。目の前にあることを究める、「自分だったらこうする」というレベルでやらないと気が済まないようになるんですね。カカオの産地に行けば面白い虫がいたりする。産地へ行く一つの楽しみです。つながっていますよね。店があるのは三田の住宅地ではあるけれど、車で走ったらすぐ山が見えたりするところです。子どもの時の原体験のワクワクする感覚が今もすぐ近くにあるとか。庭に木を植えるのも子どもの時の感覚、ワクワクした中でお菓子をつくりたいとか。そこに戻っているというか、そこから離れたくないという感じはありますね。

門上 小山さんのワクワク感と知識のつながり。まだ奥があるのではないかと、次々と扉を開けていってまた新しい世界との出合いがあるということを、ショコラの世界を通じて提案していただいて、「考えるショコラ」ということにつながると思いました。

小山 特にショコラの世界はまだまだヨーロッパが主流だと思われている、圧倒的に。今でも消費者の方々がそう思われているから「世界にはフランスだけじゃなくおもしろいものはたくさんある!」を伝えたくて、フランスの年1回のサロン・デュ・ショコラに出品しているのですが、消費者の方とともに成長したい。僕は世界を目指して修業したわけでもない。日本の土壌で日本的なお菓子を学んできたタイプです。京都で生まれて神戸で修業して、生活して。自分の日常の中から生まれる作品をフランスで発表したら、たまたま評価してくださる方がおられた。中には、ヨーロッパで修業した方がいい人もいるでしょう。どんなところでも頑張れる人は頑張れると思うので、ヨーロッパは閉鎖的で発表しにくい、というイメージがあって、それでも発表にいくべき場所なら、その形をつくってあげられるといいなと思っています。今いる場所で一生懸命やることが、その拠点が、重要なんだということ。いろんなジャンルで自分がやっていることを、子どもたちや次に働こうしている人や、今、ショコラティエとして頑張っている人につなぎたいという思いはあります。

門上 それを発信するステージが世界だったと。

小山 ショコラは舶来品という意識が強いので、向こうからやってきている。それを平等化というか、日本のクオリティは高いし、ショコラはフランスとか、ベルギーとか、スイスが一番ではなく、それぞれのものづくりとして楽しいレベルまでいけたらいいなと思います。

門上 どこであっても自分の仕事を全うする。扉を開けていけば世界で評価されることをご自身が証明されているわけで、こういう方が関西におられることは非常に頼もしい。今日は小山さんにいろんな角度からショコラについて語っていただきました。今日はしっかりとお教えいただき、いろんなプレゼンテーションをしていただきましてありがとうございました。もう一度小山さんに大きな拍手をお送りください。